金沢・片町のA_RESTAURANTでは、コースの料理のそれぞれに、ノンアルコールドリンクのペアリングをご提供しております。
バーマンによる独創的な発想から生み出されるA_RESTAURANTのノンアルコールペアリング。
本記事では、固定概念にとらわれず、他では類をみないドリンクたちのペアリング要素やレシピ、発想や思考の一部を解説いたします。
今回は、2021年2月のA_RESTAURANTコースメニューと、ペアリングドリンクのレシピをご紹介します。
春菊 ころ柿 / 春の芽吹き - 前菜2皿
アペリティフ:アーティチョークIPA
焦点 : 苦味
春の芽生えを感じさせる、苦味を楽しむ前菜2品に合わせ、食事とはニュアンスの違う苦味でドリンクを合わせる。
一歩間違えれば飲めたものじゃない苦さのアーティチョークをメインに、リコリスやダンデライオン(タンポポの根)など草根木皮を煮出し、自然な甘みとものすごい苦みのあるお茶を抽出。
これをベースにコブミカンのフレーバーが特徴的な、フェンティマンス インディアン トニックウォーターでアップしインパクトのあるIPAビールをイメージしたハーブティーに仕上げる。
居酒屋でよく見る、”春は苦いもん食ってこそ日本人やろ!”とか言っちゃうオジサンをイメージした一杯。
- アーティチョーク 5g
- ダンデライオン3g
- リコリス1g
- お湯200ml
5min抽出し急冷。抽出した苦いお茶20mlをフェンティマンストニックでアップする。
春菊 ころ柿
ペアリングドリンク:森の番人(カクテル)
焦点 : 山泥棒
狩人の守護聖人という名のリキュール、イエーガーマイスター。56種類のハーブ類で作られるドイツのリキュールで、さまざまな草根木皮が由来と思われる複雑な苦味と甘みを持つ。
春菊の苦味に合わせこのイエーガーをジンジャービアでアップ。自家製のビターズで香りもより複雑に。春先に出没する他人の山で勝手に山菜を取る山泥棒を監視する森の番人をイメージ。ガーニッシュのオレンジピールは森の番人の帽子に付いている鳥の羽飾り。ガチムチなスナフキンを妄想。
- イエーガーマイスター 20ml
- フィーバーツリー ジンジャービア 40ml
- 自家製オレンジビターズ 1Dash
- オレンジピール (ガーニッシュ)
カクテルグラスにカットしたアイスを入れ常温に晒しておく。イエーガーとジンジャービアをプレミックスしグラスに注ぐ。オレンジビターズを振り、グラスのフチにオレンジピールのガーニッシュを飾る。
いか カリフラワー
ペアリングドリンク:じゃがチーズ
焦点 : デンプン
カリフラワーが持つ野菜の旨味と繊維質。料理の方ではチップス状になっているので、ホクホク感をドリンクで復元させるイメージ。
ジャガイモを実と皮にわけ、皮からはベースとなる大地の香り。実からはホクホクしたデンプンを採取。潰したケッパーも一緒に蒸留しアクセントに。さらりとした水なのにモッタリと厚みのある味わい。ソースに合わせ、削ったパルミジャーノレッジャーノをスノースタイルで飾り、チーズのフレーバーと程よい塩味を持たせる。乳臭さを抑えるためレモンゼストとブラックペッパーをひと振り。
普段は穏やかだが一言が重い。架空のキャラクター、イカ大王の妻をイメージ。
- ジュニパーベリー 3g
- ジャガイモ 2ヶ
- ケッパー 4粒
- 水 800ml
- パルミジャーノレッジャーノ 適量
- レモンゼスト 適量
- ブラックペッパー 適量
- カットレモン (スノースタイル用)
ジュニパー、ジャガイモ(皮を剥き実はざく切り)、ケッパーを水の中で潰し蒸留。
グラスにレモンを塗り、削ったパルミジャーノをスノースタイル。常温にさらしておいたキューブアイスをグラスに入れ、蒸留水を30ml注ぎレモンゼストとブラックペッパーを軽く振る。
清水仕立て 源助大根
ペアリングドリンク:森のエキス
焦点 : 温もり
心温まるような大根のお椀に合わせ、ホッとするドリンクを。
心洗われるようなお出汁に合わせ、ドライにしたマイタケとパースニップからでる旨み。源助大根には焦がしたパプリカからの自然な甘みを。グリーンピースの緑の香りに合わせ、煎ったピスタチオの油分と塩味。これらをまとめ引き締める役割として生姜の搾り汁を数滴混ぜ合わせる。
“修行僧から絶大的な支持を得る精進料理会のカリスマの料理本に載ってそう”をイメージ。
- マイタケ × 1P/85g (ドライ)
- 赤パプリカ × 1ヶ
- パースニップ × 1/2本
- ピスタチオ × 10g
- 水 × 1000ml
- 生姜搾り汁 適量
ドライにしたマイタケ、1/8カットにし焦がした赤パプリカ、イチョウ切りのパースニップ、すり鉢で軽く砕き乾煎りしたピスタチオを水から火にかけ沸騰後弱火で15分煮る。
急冷しザルで濾して小分けに真空。真空のまま低温のお湯で湯煎しグラスに注ぎ、生姜の搾り汁を5Dash加える。
サクラマス たけのこ
ペアリングドリンク:ヴァージン・マティーニ
焦点 : ジン
マスにジュニパーの香り、焼けた醤油に塩漬けのオリーブを合わせ、ダーティーマティーニをノンアルコールのモクテルで。
香りが出やすいようにチョッパーで軽く傷をつけたジュニパーベリーと潰した塩漬けのオリーブを浸漬し、グレープフルーツの皮と共に蒸留。冷蔵庫で一晩寝かせ香りを落ち着かせた蒸留水をカクテルグラスに注ぎ、オリーブを沈める。仕上げに魚と相性の良いホワイトペッパーを軽く振る。
ジェームスボンドにニヤッと微笑んでもらえることを願う。
- ジュニパーベリー(ホール)× 5g
- オリーブ × 2粒 / ガーニッシュ用 × 1粒
- グレープフルーツ ピール × 1ヶ分
- 水 × 1500ml
ジュニパー、潰したオリーブ、アルベドをとったG.Fピールを蒸留しボトリングし一晩寝かせ香りを落ち着かせる。カクテルグラスに注ぎ、カクテルピンに刺したオリーブを沈めホワイトペッパーを軽くふる。
オリーブ牛
ペアリングドリンク:beet barley
焦点 : チャーバレル
牛の脂と旨みにビーツとクミン、カカオにカルダモンとコリアンダーシードで土と緑と苦い香り。それらをチャー(焦がした)バレル(樽)で熟成させるイメージで、煎った大麦の香りをインフューズさせ炭焼きの香りに合わせる。
グラスを近づければガーニッシュのレモンピールとハーブの爽やかな香りが鼻腔をすり抜け、口にした途端ビーツの甘みとスパイスの複雑な香り、アフターには焦がした樽香がじわっと残る、貴腐ワイン樽熟成をイメージしたメインにふさわしい厚みのあるモクテル。
- コリアンダー(ホール)× 2tsp
- カルダモン(ホール)× 2ヶ
- ビーツ × 2ヶ
- 水 × 800ml
- クミン(ホール)× 1tsp
- バーリーマックス(大麦)× 30g
- フレッシュレモンジュース × 1tsp
- レモンピール
- ローズマリー
- レモンタイム
コリアンダー、カルダモンをすり鉢で潰し鍋で軽く煎る。ビーツの皮を剥き短冊切りにし鍋に入れ水を加え沸騰させ、弱火で20分煮詰める。
ハンドブレンダーで撹拌しクミンを加え弱火で5分煮詰める。
濾したものに乾煎りしたバーリーマックスを加え一晩冷蔵庫でインフューズし翌日濾してボトリング。レモンジュースを入れたグラスにビーツを注ぎ、フチにレモンピールとローズマリー・レモンタイムを飾る
ベトナムショコラ
ペアリングドリンク:バタード・ナッツ・ミルク
焦点:焙煎香
カカオの香りを引き立て、アフターに長く残るイチゴの甘酸っぱい香りに合わせるため、まろやかなアーモンドミルクを作る。アーモンドとクルミをバターで素揚げのように火入れし、バターに香ばしいナッツの香りを移す。そこにミルクを加え、今度はミルクに香ばしいバターの香りをインフューズ。冷して油分を分離させウォッシュ。バターの香りだけをミルクに残す。
ウォッシュのおかげでサラリとしているが、しっかりとバターの香りが乗っているので、濃厚なチョコレートとの相性が良い。
- スライスアーモンド × 25g
- クルミ × 20g
- バター × 30g
- 牛乳 × 300ml
- 生クリーム × 100ml
- 塩 × 2つまみ
- バニラシロップ × 1Drop
スライスアーモンド、砕いたクルミを鍋で乾煎りしバター30gを溶かす。牛乳と生クリームを加え、塩2つまみ振り一煮立ちさせ、粗熱をとる。冷めたらストレーナーで濾して一晩冷蔵保存。分離した油をスプーンで削ぎ、ミルクを真空パックで小分けにする。
真空のまま低温のお湯で湯煎しカップに注ぎバニラシロップを垂らす。
元音響エンジニアのバーマン。
外食はコンサートと同じ。料理やドリンク、空間やサービスで楽しいショーを体験する時間。ステージを彩るドリンクで、ショーの一翼を担う。