2021.01.13

若山曜子
Apéroアペロ【私の食のオススメ本】

  • 書名:アペロ フランスのふだん着のおつまみ
  • 著者:若山曜子
  • 発行所:立東舎
  • 発行年:2018年

最近はわからないが、90年代のパリはまだ歩き煙草と歩き食が普通だった。店で食べると高くなるからだ。小さな中東惣菜店とかあって、自分的には珍しくてよくホテルに買って帰った。すでにケバブは中学生でも知っているくらい有名でどこにもあるが、いまではファラフェルの専門店が東京にいくつもできている。

アペロ(Apéro)とは食前酒、アペリティフのことだ。そして食事が始まるまでに楽しむフランスのおつまみというと、イタリヤやスペインに比べて、どうしても無国籍な感じがしてくる。いろんな民族が都市部にいるからだろうか。

ル・コルドンブルーパリ、フランス料理高等専門学校エコール・フェランディーを経てC.A.P(フランス国家調理師資格)を持つ著者・若山曜子のつくる「おつまみ」はその出自からきっちり正当な感じと小林カツ代的な「ふだん着」感と、レシピにフムスヨーグルトソースのモロッコ風フリットなども登場し前述の無国籍感も漂う。

食事が始まるまで楽しむと書いたが、その時間は1時間を超えることもある。そんなに飲んだり食べたりしてからよく食べられると思うが、個人の家庭に集まる食事会などではおしゃべりが弾むこの時間が楽しいのだ。そのために簡単ですぐできて追加も可能、みたいなおつまみがたくさんある。

切ってのせるだけのタルティーヌ。いろいろつけてたのしいパテ、リエット。焼きっぱなしでおいしいロティ、ガトー・サレ。冷蔵庫にあると安心マリナード、コンフィ。少しの油で揚げるベニエ、フリット

レシピの文字で味を想像し、空気感のある写真を見てページをめくればワインが1本空きそうだ。

WRITER Joji Itaya

出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。