2023.01.30

いっぽん!!しあわせの日本酒
【私の食のオススメ本】

  • 書名:いっぽん!!しあわせの日本酒①②③
  • 著者:原作:増田晶文 漫画:松本救助
  • 発行所:ヤングジャンプコミックス
  • 発行年:2016年〜2017年

漫画で知識を得るというのは肩が凝らずに、コマの絵も記憶に残るので楽しく便利だ。本書では毎回日本酒が紹介されていくので気になったものはAmazonのリストに入れてきた。膨大な日本酒メモ。

原作の作家、増田晶文は日本酒愛好家でボディービルとかスポーツが好きで、落語も好きらしい。雑誌GQやNumberで好きなものを追いかけては書いているという羨ましい人だ。小説のほかにドキュメンタリーやノンフィクションを主な仕事としている増田晶文が「読めば呑みたくなる本格日本酒コミック」として漫画家・松本救助※と組んで発表したのが本書だ。

(※まつもときゅうじょ 青年誌での執筆が多い女性漫画家。初期に新宿ゴールデン街でマンガリッツァ豚がマスターを務める店の話『Bar:Mangalica』という変わったWEB漫画を公開していた。ひょんなことでマンガリッツァ豚の本家ハンガリーに国賓として招かれるという変な人である)

本書は、老舗百貨店のデパ地下担当の若い社員・紗々竹葉が新社長に見込まれ百貨店の命運を賭けた50周年イベントの「日本酒企画推進室室長」を命じられたことで始まる日本酒探し物語。1〜3巻で実在の25の日本酒に出会いながら発見と成長をしていくバイヤーの話である。

この漫画をドラマ化するなら主役俳優は永野芽郁とかだろうか。つまり、コメディー要素が強い展開なのだけれど、日本酒のことと日本酒の現状についてはほぼノンフィクションなので面白い。

このグランドジャンプ誌での掲載企画は増田晶文の提案なのだろうか?それとも編集部からのオファーだろうか?1話1話の最後に、毎回本人による酒蔵取材をしたその酒をよく表しているコラムがある。これを読むのがまた楽しい。原作仕事がなければ羨ましい仕事だ。

最初のページに「日本には約1300の蔵がある。<酒屋万流>の言葉通り各蔵が個性的な酒を何種類も醸している。ひと蔵で複数の酒を醸すだけでその数は3万種類以上ともいわれる。いま日本酒の醸造技術が最高レベルに達していることを鑑みれば必ずあなたに合う最高の一本が見つかるはずだ」とある。

複雑に絡み合う要素を持つ日本酒はワインのように〇〇に合うと言い切れないことが多い。温度や状況で飲み方も変わる。この漫画では定説的な食べ物、料理との合わせ方を覆す場面も多く、日本酒愛好家である増田晶文ならではの仕事だと思う。

登場する日本酒は次の通り。
うまからまんさく 仙禽かぶとむし 山法師 貴 村祐 鬼夜叉 丹澤山麗方峰  
 新政 No.6S-type 百十郎黒面 澤姫 生酛純米<真・地酒宣言> 桂月銀杯 常山 純米超辛 やまとしずく 生酛純米 坤滴 花巴 水酛純米無濾過生原酒 豊賀 純米吟醸 純米afs生 一博 純米うすにごり生酒 大治郎 純米生酒 栄光冨士 純米吟醸 末廣 伝承山廃純米 蓬莱泉 純米吟醸<和> 雪の茅舎 秘伝山廃純米吟醸 誉池月 純米改良雄町木槽しぼり 白隠政宗 純米酒生酛誉富士 

WRITER Joji Itaya

出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。