- 書名:ふしぎ駄菓子屋 銭天堂
- 作者:廣島玲子 画家:jyajya
- 発行所:偕成社
- 発行年:初版2013年 2021年82刷
シリーズ累計発行部数が2021年3月の時点で300万部を超えている人気児童書。2020年にはアニメ化され人気を博した。廣島玲子は「水妖の森」でジュニア冒険小説大賞をとっている。
いつもはだれも気づかないのだが商店街の横道にふと現れるレトロでふしぎな駄菓子屋が「銭天堂」。真っ赤な口紅、ふくよかな体型、古銭柄の着物姿の紅子という店主は訪れる客(ほぼ子供)に不思議な駄菓子を与える。
全国学校図書館協議会・選定図書になっているのは、駄菓子を食べた子供が不思議な体験をして、最後は自分の間違いに気付いたり勇気をもったりするストーリーであるからだろう。読むと星新一のショート・ショートやレイ・ブラッドベリの小説「たんぽぽのお酒」に触れた時に似た感覚が湧き起こる。
売られているお菓子はみんなが食べたり体験したりした駄菓子に似ているが捻った名前になっているところが物語と絡んだ面白さだ。
第一巻では・・型抜き人魚グミ、猛獣ビスケット、ホーンテッドアイス、釣り鯛焼き、カリスマボンボン。
以降十五巻まで全部は読んでいないが…クッキングツリー、ヒーロー刑事プリン、怪盗ロールパン、ミュージックスナック、ドクターラムネキット、おもてなしティー、獏ばくもなか、ヤマ缶詰とずるずるあげもち、ウルフまんじゅう、ゴブリンチョコエッグ、虫歯あられ、虹色水あめ、お稲荷せんべい、しわとり梅干し。
さらに、しっぺがえしメンコ、わら人形焼き、逆襲ジンジャーエール、らくらくがん、ほしいイモ、なりきりくずきり、酔わんようかん、コントロールケーキ、いそげもち、のんびりりんご、なつかれナッツ、もてもてもち、みせびら菓子、ほっとけケーキなどなど…他たくさんのお菓子が、悩みをもつ子供や大人に与えられる。
アニメ化のせいか、一気に人気が出た。一点だけ違和感があったのは店主紅子が「〜ござんす」「〜ざんす」という言葉を使うことだ。遊女言葉の御座りますの音便をなぜ使わせるのか?それとも長野あたりの出か。どちらにせよ意図はどこにあるのだろう。
ただ、大人が読んでも面白いのは確かだ。
出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。