韓国語で「ハルモニ」とは”お婆さま”を意味し、少し上品な呼び方を指すが、日常ではもっとフランクに「ハンメ」=”婆ちゃん”と親しみを込めて呼ぶ。
私のハンメは、いつも優しい笑顔で私を迎え入れてくれる存在だった。彼女はとても料理が上手く、田舎で焼肉屋さんを営んでいた。
手作りの料理は、どれも温かくて、心に深く刻まれる味だった。毎週末、ハンメのお家に遊びに行くと様々なおもてなしをしてくれたものだ。
特に想い出深いのは、彼女の作る『マンドゥ』だった。
子供の頃、私はハンメと一緒にキッチンに立ち、彼女がマンドゥを作る様子を見るのがとても好きだった。
筋張った小さな手で生地をこね、具材を包むその姿はまるで魔法のようで、私はそのすべてが特別で大切な瞬間だと感じていた。
ゆっくりとした手つきで、一つ一つ丁寧に包み込む。その姿は、ハンメの愛情そのものだった。
時が経ち、私は大人になり、忙しい日々の中でハンメとの懐かしい味と風景をふと想い出すことが多くなった。
ある日、ふとハンメの作る、あのマンドゥが食べたくなり、その味を再現してみようと思い立った。
しかし、彼女のように上手くできるかどうか、不安と期待が入り混じった気持ちだった。
recipe
マンドゥの皮
- 小麦粉・強力粉・水の割合は1:1:1
- ごま油少々
- 捏ねて、手にくっ付かなくなったら1時間ほど生地を休ませる。
マンドゥの種
- 豚ひき肉
- ニラ
- ネギ
- 豆腐(水切りしたもの)
- 春雨
- 人参
- etc… As you like
キッチンに立ち、記憶を頼りに生地をこね、具材を準備し、ハンメのやり方を想い出しながら一つ一つ包んでいった。すると、不思議なことに、あの懐かしい香りが漂ってきた。茹であがったマンドゥを一口食べてみると、あの頃の味が口の中に広がった。モッチモチの食感で、何度もおかわりをせがんだこの味。まるでハンメがそばにいてくれるような気がした。
自分で作ったマンドゥが、ハンメの味に近づけたことが嬉しくて仕方がなかった。あの優しい笑顔と温かい手のぬくもりが、心の中に蘇った瞬間だった。これからも、祖母の味を大切にしながら、想い出のマンドゥを作り続けたいと思う。
ハンメの味を再現することで、彼女の愛情を感じ続けることができる。それは、私にとって何よりも大切な宝物だ。ハンメとの想い出を胸に、またマンドゥを作ろう。きっと彼女も天国から見守っていてくれるだろう。
沖縄にルーツを持つ父親と、韓国人の母との間に産まれ、幼い頃から日本食とは一風変わった食卓で育ちました。
転勤族の父親に付いて、全国津々浦々に移り住み、グルメな母親の影響で週に一度は外食をしていました。
それでもやはり、一番好きな食事は母親の手作りです。母も小まめに料理を作り、夕飯の家族一緒の団欒はかけがえのない想い出です。
今でも月に一度の頻度で、田舎の特産品や母親手作りの常備菜が届きます。
そんな私が、もう永住するしかないと決めた大好きな街、金沢。
其処から全国、ひいては全世界に向けて食のあり方を発信することが出来る私たちの会社を誇りに思い、末端ながらお仕事出来る喜び…と、美味しい賄いを噛み締めている毎日です。