2024.09.08

女将のインスタレーション展『一滴の河』

9月21日•22日、四半世紀以上にわたり日本料理 銭屋の女将を務めている髙木 幹氏が金沢市民芸術村にて26年ぶりの個展開催。

8日、日本料理 銭屋よりプレスリリースが配信されました。それは店の新企画や料理についてではなく、20代より四半世紀以上にわたり銭屋の女将として過ごしてきた髙木 幹(たかぎ みき)さんが26年ぶりに作家としてインスタレーション作品の発表をするという内容でした。

「インスタレーション」とは1970年代に生まれた、空間全体を使った現代美術のひとつの表現方法です。2次元の絵画や彫刻などとは違い、 鑑賞者は作品の中に入り、五感でアーティストの世界観を感じることができます。 その世界観は壮大であったり繊細な雰囲気などを持ち、予備知識を必要としない感覚に訴える作品が多いと言われています。

日本のインスタレーションの女性アーティストといえば、NYでデビューした前衛作家の草間彌生、同時期にオノ・ヨーコもいます。ジョン・レノンとの出会いはロンドンのインディカ・ギャラリーでのヨーコの個展だったのは有名です。

近年で注目されている女性アーティストは塩田千春束芋などでしょうか?ちなみに、草間彌生は京都市立美術工芸学校絵画科を卒業しています。ここは髙木 幹さんの通った大学院のある、後の「京都市立芸術大学」となった専科です。

金沢市民芸術村 里山の家

 金沢市民芸術村の里山の家の4部屋の和室の襖を取り払って1つの和室空間とし、その空間でしか存在しない作品の完成を目指しています(髙木 幹)

東京の武蔵野美大に進み、京都市立芸術大学大学院で彫刻を学んだ髙木 幹さんは、活動間も無く作家として歩く「時」を止めました。嫁ぎ先の実家である日本料理店に入ります。26年後、3人の子供が大学生になったのを機に処分しようと、残していた過去の作品に対面しました。その時、作品だけではなく当時のがむしゃらな若いエネルギー溢れる自身にも対面したのでしょう。

「時」は動き出し、髙木 幹さんを「若い頃には作り急ぎすぎて出来なかった再構築するという挑戦」へと駆り立てました。

女将を務める日本料理 銭屋のプレスリリースには「私の経験した子供達の輝く生と身近な人達の死、 時に華やかで時に虚しい女性としての人生観も、 河の流れの姿を借りて、 自身の無常観として表現できたらと思います」と髙木 幹さんの言葉があります。

日本には四季があるため、暮らしに常に変化があり、そこから独自の無常観が作り上げられてきました。季節に重きをおく日本料理を供する場で、国内外の客人(まろうど)をもてなしながら「時」の流れを感じ重ねてきた女将としての人生が、若き作家「髙木 幹」には見えなかった風景を本展では現してくれるのではと、筆者個人として大変楽しみにしています。

そして、身内ということだけではなく作品と活動への理解と尊敬の念をもって、作家・高木 幹としての活動を応援し、プレスリリースした日本料理『銭屋』にも敬意を表したいと思います。

『一滴の河』というタイトルの、四半世紀という時の流れから言えば二日間限りという刹那的な時間とも言えるインスタレーション。だからこそ表現されるのではないかと思われる髙木 幹さんの「無常観」を感じに行こうと思います。

RIFF編集部(text: Joji Itaya)


高木 幹 作品展
『一滴の河』

2024年  9月21日(土)・22日(日) 09:00-18:00
金沢市民芸術村 里山の家
金沢市大和町1-1
入場無料 


プレスリリース
(髙木 幹氏の、作品と作品を作ることへの思いが書かれています)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000148939.html