2025.06.10

「すしあわせ」Forbes.comで紹介される〜A__RESTAURANTのヤミーハンティングで取材。

79 Spectacular Dishes From Restaurants Worldwide For Seafood Month

2025年6月7日、Forbes.comに「全米シーフード月間にちなんだ世界のレストラン79の絶品料理」という記事が掲載され、A__RESTAURANTのオリジナル創作寿司『すしあわせ(SUSHIAWASE)』が紹介された。また、記事全体のトップ画面にも同レストランの料理写真が使用された。英語原文記事はこちら

全米シーフード月間とは

記事にはまず「全米シーフード月間(National Seafood Month)にちなみ、あなたの味覚を刺激する世界のシーフード料理のリストをご紹介します!」とある。これは今年の「全米シーフード月間」盛り上げるためと、この期間を楽しみにしているファンのために書かれたのだろう。

『全米シーフード月間National Seafood Month』とは、毎年10月を通してアメリカで祝われる、海産物を称えるイベント。アメリカ海洋漁業局(NOAA Fisheries)はこれを、アメリカが天然・養殖を問わず持続可能なシーフードの世界的リーダーとして認められていることを祝うにふさわしい時期としている。

また、その目的として「海産物を称え、その美味しさを楽しむ」「海産物の栄養価や健康へのメリットを伝える「持続可能な漁業の重要性を啓発する」「海の資源を大切にする意識を高める」が掲げられ、活動例として様々なイベントの他に「海産物のレシピを共有する」ということも挙げられている。

海に囲まれ豊富な魚介に恵まれている日本において、このように国をあげて大々的に開催されるお祭りのような時期がないのは不思議であり、もったいないの一言に尽きる。インバウンドのみならず、国内旅行者にも日本の食文化を深く知ってもらうために、そして旅行のモチベーションとしても効果があると思われるのだが。

記事の冒頭は次のように続く。
クリスタル(※1)の豪華なNOBUスタイルの銀ダラ(西京焼き)から(バハマ南東の)タークス・カイコス諸島のワイマラ・リゾートのカリブ海シーフード・クレイポット(土鍋仕立て)まで、そしてソーホー・ビーチハウス・カヌアンの真鯛のブラフからUMI UMA(※2)の洗練されたマグロのタタキまで、これらの料理は世界の舞台においてシーフードの芸術を披露しています。大胆な(トロピカルフレーバー融合させた)カレー、繊細な生もの、または伝統的な料理にひねりを加えたものなど、どの料理も海の恵みを存分に堪能させてくます

 ※()内は編集部補足
 ※1 クリスタル/運営会社クリスタル・クルーズが欧米富裕層向け旅行会社A&K(アバクロンビー&ケント)トラベル・グルー プの傘下となり、改装され2023年から新たに運行している二隻の豪華クルーズ船。同時に離れていたレストランUMI UMAも復帰再開した。
 ※2 UMI UMA/世界的な日本料理レストランNOBUのシェフ、松久信幸氏率いる日本料理文化とペルーの食材にインスピレーションを得た、革新的な日本ペルー料理レストラン。

「すしあわせ」が紹介された本文がこちら

Sushiawase

At A__RESTAURANT in Japan, sushiawase reimagines traditional Japanese sushi. The omakase nigiri sushi course features seasonal seafood—like Kanazawa sweet shrimp, squid, silver-skinned fish and sea urchin—prepared with a variety of techniques to highlight freshness and flavor. “We’ve reimagined traditional Japanese sushi by combining its core elements with techniques and ingredients from other culinary cultures, creating a completely new style of fusion sushi unique to A_RESTAURANT,” says head chef Hideyuki Kon.

日本のA__RESTAURANTでは、Sushiawaseが日本の伝統的な寿司を再構築している。”OMAKASE握り寿司コースでは、金沢甘エビ、烏賊、光り物、ウニなど旬の魚介類を(※伝統的なものから分子調理まで)さまざまな技法で調理し、鮮度と風味を際立たせています

A__RESTAURANTの料理長である今英之は、「日本の伝統的な寿司の核となる要素に、他の食文化の技術や食材を組み合わせることで、A__RESTAURANT独自の全く新しいスタイルのフュージョン寿司を創り上げました」と語っています。

記事を書いたForbes.comの公認寄稿者(Contributor)Kaila Yu(以下カイラ)さんはこの5月に金沢を訪れていた。今回、金沢からはA__RESTAURANTの他に「金城樓」とGrill & Lounge(Hyatt Centric Kanazawa)が紹介されているが、日本国内で紹介されたのは東京などを含めそれぞれ創造性、伝統、専門性などで個性ある数店だけだ。中でも金沢は取材したての新鮮な情報となった。

執筆者Kaila Yuさんとヤミーハンティング

今回のA__RESTAURANTの掲載は、5月26日に寄稿者であるカイラさんが、旅行代理店などとA__RESTAURANTとで開催している”その日のディナーのための食材をシェフと共に朝の近江町市場で探すツアー”『Yummy Hunting』への参加から始まっている。市場での体験が食材への理解を深め、想像を超えた調理による驚きを増幅させたことは間違いない。(※ヤミー・ハンティングについては記事後半に記載)

「あの魚が、あの野菜がこんな形で、こんなテイストで出てくるとは!」と思わせてくれるのがA__RESTAURANT『Yummy Hunting』の醍醐味なのだ。

さて、台湾系アメリカ人のカイラさんはロサンゼルスを拠点とするラグジュアリー・トラベル&カルチャー・ジャーナリスト。今回寄稿された記事で紹介された79のレストランを見ただけでも世界中を飛び回っていることは確かだ。記事で紹介された場所は、 Kanazawa, Los Angeles, Maldives, Tokyo, Priorat(Spain), New Zealand, Eze(France), Ningbo(China), Hollywood, Thailand, Ubud(Indonesia), Wymara Resort, New London(Connecticut), Mexico, Singapore, Maui, Melbourne, EVA AirHolland America Line,  Crystal(高級クルーズ船),などなど。

ここでカイラさんのプロフィールを少し紹介しておきたい。彼女の店と料理に関するテキストは至ってシンプルだ。大袈裟な形容はなし。しかしそれらは多くの経験から育った視点の面白さで選ばれていることがプロフィールからも感じ取れるのではないかと思う。

台湾系アメリカ人のカイラさんはカルフォルニア大学サンディエゴ校で生物学を学んでいたがUCLA(経済学部)に編入。元モデルでシンガーソングライターであり、The Nylon Pinkというロックバンドのボーカルでもあった。さらにNylon Pinkと提携したジュエリー/ファッションライン「Hello Drama」の創業者でもある。MTVなどの番組MC経験もある。著作に『Fetishized』があり、自らの体験から<アジアン・フェティッシュの対象であること、メディア、ポップカルチャー>などを記したエッセイとなっている。

そしてジャーナリストとして Forbesの他,Los Angeles Times, New York Times, The Rolling Stone, Conde Nast Traveler, National Geographic, CNN, GLAMOURなど数多くのメディアに寄稿している。

また、彼女はPADIのスキューバダイバーとフリーダイバー(素潜りの競技)の資格を持ち、さらにはmermaid(マーメイドスイム)の資格までも取得している!

マーメイドスイム参考写真:PADI JAPANの公式サイトより

このことからも彼女が、世界中の海と、海の恵みであるシーフードを愛し、楽しんでいることが想像できる。そして地域の食文化も含め多くの人々に伝えようとしていることも。

ヤミーハンティングの楽しさを金沢から

食材をシェフと一緒に買い付けに行くところから始まるディナー、それが『Yummy Hunting』。インバウンドのために企画された食材の買付けからディナーまでを楽しむイベントだ。今回はアメリカからやってきたカイラさんとお母さん親子も参加となった。

朝10時、金沢市の中心地にある近江町市場に集合したヤミーハンティングの参加者とシェフたちは、さっそく普段仕入れをしてる青果店と鮮魚店へ向かう。近江町市場は1721年に加賀藩の御膳所として生鮮食品の店が集められたのが始まりといわれ、生鮮食品などの食品と生活雑貨を扱う小売店や飲食店など約180軒が縦横に軒を並べている。

実はこの時点でも、ディナーの時も、カイラさんがどのような活動をしているのか誰もがあまり具体的には理解していなかったようだ。彼らはいつも通り、食べることが好きな外国からのお客様の興味に応えて楽しんでもらうように対応していた。

この『Yummy Hunting』の醍醐味は、一般の人が購入できないプロのための店で、専門業者とシェフの説明を聞きながら仕入れに参加できるということ。そしてその食材をどのようなスタイルで提供されるか、果してどんな味なのかを楽しめることにある。

市場の青果店でじゅんさいに興味を持ったカイラさん
業者専用の水産卸しの店舗で今(こん)英之シェフと仕入れ体験
見た目も怖い活オコゼを購入
美しい刺身で提供されたオコゼ

朝の仕入れの時点では、選ばれた食材をどのように調理するかは決まっていない。シェフたちはレストランの厨房に持ち込まれた食材からインスピレーションを受けて急いで仕込みをしながら完璧なメニューに落とし込んでいく。レシピもその時点で作り上げられるのだ。

夜18時半、ディナーのスタートともにゲストの驚きと喜びの声がコースの終盤まで続く。

バーカウンターでアペリティフを自分流に盛り付けるという遊び心
キッチンに造られたカウンター席に移動
ゲストは調理の様子も楽しみながらシェフの説明を受ける

市場で仕入れた食材たちは国境を忘れ予想を超えた味をまとい変身していた

食事「すしあわせ」

パティシエの清水シェフの手で目の前で仕上げられるデザートたち
最後はお抹茶で

歩いていける観光地が多い街の中心地に市場がある金沢ならではの『Yummy Hunting』は、1日を通して食を楽しめるエンターテインメントだ。カイラさんの記事によって、金沢の食を楽しむ海外からの旅行者が増えることを期待したい。

記事・取材 RIFF編集部(text : Joji Itaya)