2021.01.05

ルックス重視ですが何か?

ボジョレーヌーボー2020のエチケット

新しいワインの造り手が次々と出てくるフランスだが、レコードやCDの存在していた時代の生き残りの私が思わず「ジャケ買い」してしまったワインがある。
ジャケ買いならぬ、「エチ買」である。

ちなみにワインのラベルのことを「エチケット」という。

なぜエチケットと呼ぶのか、私も能くは知らない。

しかし、エチケットがなっている(お作法がいい)のあのエチケットと同語源とされる。

エチケットの元来の意味は「荷札」である。

このワインは何かという中身に関して記載された「荷札」が貼られていたことから、このラベルのことをエチケットと呼ぶようになったらしい。

さて、このエチケットである。

19世紀末ウィーンのグラフィックデザインのような、60年代ヒッピー・カルチャー感のような。

このサイケ感である。

ジャズのジャケットだったら、マイルスの『パンゲア』かキース・ジャレットみたいにデロデロした曲が中に入っていそうな気がする。

ワインのブテイユとは思えないハイセンスなエチケット。
このワインブランドの「セレネ」とはギリシア神話の月の女神。このエチケットも月の女神をモチーフにしている。

※ブテイユ(Bouteille):ワインのボトルサイズの1つ。 容量は750ml。

このワインの生産者はブルゴーニュの最南端ボジョレー地方にあるブラッセ村のシルヴェール・トリシャール(Sylvere Trichard)。

本人はゴリゴリのタトゥー大好き人間(特に日本の刺青が好き)なので、エチケットにもタトゥーのセンスが生かされているのかもしれない。

畑を始めたのは2012年。フランスのボジョレー地方の自然派ワインの畑持ちの醸造家の中では最も若手である。

ボジョレー地方は最近では自然派ワインがどんどんと増えている地域なのだが、そのボジョレー自然派の中心人物の一人ジャン・クロード・ラパリュの下でワイン醸造を学んだシルヴェール氏。

シルヴェール氏のワインは、自然派ワインである。ブドウを育てるときに農薬を使わない。
そして酸化防止剤(SO2)も一切不使用というかなりリスキーな醸造法なのである。

なぜ酸化防止剤不使用がリスキーなのか。

ワイン醸造には酸化防止剤は不可欠とされる。発酵槽で雑菌が発生するのを防ぐ意味がある。当然ながら、雑菌が死ぬぐらいなのだから、ブドウに付着していた自然酵母も死んでしまう。酵母がないのだからブドウの絞り汁を放っておいても発酵することはない。

ではどうやって発酵させ、ワインにするのか。

畑とは無関係な人工酵母を後からドチャっと投入して発酵させるのである。リスクの無いモノ作りというものは、こういう所に帰着する。

しかしシルヴェール氏のワインは酸化防止剤不使用のため、ブドウについた自生酵母でそのまま発酵させる。出来上がって瓶詰め時にも酸化防止剤を入れない。

その土地特有のブドウと酵母の味わいが生きているのだ。

さらにシルヴェール氏は、醸造前に少量だけワインを仕込んでおいてそれを種酵母にする「ピエ・ド・キューヴ」という古典的な作り方にもこだわっている。

ちなみにこのボジョレー・ヌーヴォーは最初はアセロラジュース感があって、サッパリとした飲み口。ところが時間とともに、だんだんと骨格がしっかりしていく変化が面白い。

ナチュラルな液体だから、一本空けても二日酔いになることがない。

飲み終わって飾っておくだけでもインテリアとして結構サマになる。

ボジョレーは美味しくない、ワインは悪酔いする、と思っている人のイメージを払拭できる一本である。

見つける機会があれば、ぜひ手にとって飲んでほしいお勧めのボジョレーである。

※ちなみに価格は3200円から3500円ちょっとぐらいの間で取引されている。(2021年1月時点)

私は、だいたい数日に一食しか食べない。一ヶ月に一食のときもある。宗教上の理由でも、ストイックなポリシーでもなく、ただなんとなく食べたい時に食べるとこのサイクルになってしまう。だから私は食に対して真剣である。久々の一食を「適当」に食べてなるものか。久々の食事が卵かけ御飯だとしよう。先に白身と醤油とを御飯にしっかりまぜて、御飯をふかふかにしてから器によそって、上に黄身を落とす。このときに醤油がちょっと強いかなというぐらいの加減がちょうどいい。醤油の味わい、黄身のコク、御飯の甘さ。複雑にして鮮烈な味わいの粒子群は、腹を空かせた者の頭上に降りそそがれる神からの贈物である。自然と口から出るのは、「ありがたい」の一言。