【菜っ葉と鰤のアラのテンジャンクッ】※1

朝の食卓に、オカン特製のテンジャンクッの匂いが立ちのぼる。
日本のお味噌汁よりもパンチの効いた、少し野生的で、より海に近い香り。
お椀の中には、菜っ葉と鰤のアラ。
港町で育った人々にとって、魚のアラ汁は「余りもの」ではなく、寧ろ一番良い出汁が出るご馳走だ。
スカラで掬う、今朝の最初の一口。
テンジャンの重さと、ほど良い魚の脂。
クタっとした菜っ葉の青さが一緒に舌に乗る。
これは韓国料理なのか、日本料理なのか。
そんな愚問は、この一杯の前では何の意味もなさない。
韓国ではスープにスプーンを入れ、
日本では箸で具を探す。
そのどちらでもない、当たり前にあり触れた僕の日常に、今朝の「テンジャンクッ」は静かに存在している。
まるで箸と、スカラのように。
母の朝食は、アイデンティティを語ろうとしない。勿論、無理強いもしない。
ただ「食べなさい」と、湯気の向こうから差し出される。
3年振りの年末年始帰省でフッと頭に過ぎるのは、この味がいつまで続くのだろう?と、少し感傷深いこと。
これからもいつまでも、この味を守り味わい尽くしたい。

《参考レシピ》
- 鰤のアラ 1パック(300gくらい)
- 菜っ葉(ネギやほうれん草・小松菜など、その時にあるモノで) 1把
- にんにく 1片
- 出汁 顆粒タイプ(昆布出汁が好ましい)
- 日本のお醤油 大さじ2杯
- テンジャン(味噌)、コチジャン 適量
- 臭み取り用の清酒
- アラはたっぷりのお湯と清酒で一度茹でて、臭みを取り除く。
- 鍋に500ccのお水を沸騰させ、顆粒出汁を入れる。
- 出汁が溶けたら、にんにく、アラ、適当に刻んだ菜っ葉を投入する。
- 味噌で味を整える。
※1 スカラ…韓国語でスプーンのこと。正確には、숟가락(スッカラッ)だが、日本語として発音し易い表記にしている。
※2 テンジャンクッ…된장(テンジャン)は、味噌のこと。
국(クッ)は、スープのことを意味する。
沖縄にルーツを持つ父親と、韓国人の母との間に産まれ、幼い頃から日本食とは一風変わった食卓で育ちました。
転勤族の父親に付いて、全国津々浦々に移り住み、グルメな母親の影響で週に一度は外食をしていました。
それでもやはり、一番好きな食事は母親の手作りです。母も小まめに料理を作り、夕飯の家族一緒の団欒はかけがえのない想い出です。
今でも月に一度の頻度で、田舎の特産品や母親手作りの常備菜が届きます。
そんな私が、もう永住するしかないと決めた大好きな街、金沢。
其処から全国、ひいては全世界に向けて食のあり方を発信することが出来る私たちの会社を誇りに思い、末端ながらお仕事出来る喜び…と、美味しい賄いを噛み締めている毎日です。