- 書名:コンビニ人間
- 著者: 村田沙耶香
- 発行所:文藝春秋
- 発行年:2016年
コンビニ仕事のドタバタかと思ったが、コンビニという場所、コンビニという仕事の中に安らぎと生きる場所を見つけた、大学を出てアルバイトとして18年間コンビニで働き続ける36才女性の話。
したがって私生活でもコンビニ食以外は出てこないし、コンビニデザートを礼賛するシーンもない。
シュールでもなく不条理でもなく、リアルだ。
コンビニのマニュアルに安心し、同じバイト仲間の仕草やファッションを取り入れる外の人間に擬態し、安心する。
しかし、読み進めると自分の認識する既定概念をどんどん疑っていかなければならなくなる。
調理品の「唐揚げ棒」をいくつ仕込むかというマーケティングや達成感のあるシーンがリアルさに拍車をかけ面白い。
芥川受賞当時、著者はまだコンビニでアルバイトをしていた。
読もうと思ったのは、ある対談で著者の既定概念をはるかに超えた論法にあの松岡正剛がタジタジとなったからである。
出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。