- 書名:パクチーとアジア飯
- 著者:阿古真理
- 発行所:中央公論新社
- 発行年:2018年
阿古真理が書く食の歴史は読むと、なるほど、と思う。政治や経済や流行といった背景を読み込む視点と労力の凄さが伝わってくる。本人も後書きで食の歴史を書くのは大変だと書いている。
『パクチー』ブームというのはどこかの店で人気が出て広まったわけではない。この人によって好き嫌いがハッキリした植物は、少ないファンが地道に広めたために今ではスーパーの棚にも並ぶようになった。
パクチーはタイ語。英語ではコリアンダー。中国語ではシャンツァイ(香菜)。この野菜でありハーブである植物はエスニック料理がレストランで食べるニッチなものから家庭でも食べるものになっていく。
つまり日本の食文化の一つになったのだ。
トムヤンクン、ガパオ、生春巻きなどアジア飯のキーワードを雑誌『Hanako』が広め、『dancyu』が台所に引き込んだという流れがあったのだと思う。パクチー、バジル、レモングラスも同様かもしれない。
この本では日本におけるベトナム料理、タイ料理、カンボジア料理、インド料理の変遷を分析しながら、いかにしてアジア飯が日本の食文化に入り込みポジションを築いたか、その理由を解いていく。
食文化からアジア圏との関係性を学ぶ本でもある。
出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。