食の安心と安全
OPENSAUCE(以下OS)は「全ての人が何の心配もせずに健康で美味しく、楽しく食事ができる未来を作る」というミッションの基に生まれ活動している企業です。
そして、安心で安全というと必ず挙がるキーワードは「地産地消」。
では、果たして地産地消が安全なのか、生産者の顔が見えれば安全なのでしょうか。
否、安心ではあるかもしれませんが、安全であるとは言い難いでしょう。
適切な農薬を使用しているのか、またどの程度の量を使用しているのか?
いつ、どこの畑で採れたものなのか?
農家はどうやって、厳正な基準を守って安心で安全な農作物を提供しているかを証明するのか?
GAPとは何か
これらの問題を解説するのが「GAP」なのです。
Good Agricultural Practiceの頭文字をとってGAP。
和訳すると適正農業規範。要は規範を遵守して、より良い農業の実践をしていこうということです。
GAPには厳格な基準文書があります。それら沿って200以上ある項目をクリアしていく、またそれらを続けていくのがGAP。
「この基準が本当に満たされ実践しているのか」という審査(第三者認証)を経てはじめてGAP認証取得となります。
この200項目以上ある厳格な基準というのは「基準文書」になっており 「GAP普及推進機構/GLOBALG.A.P協議会(以下G.GAP)」からDLできます。
この「基準文書」にある項目に沿って、自分たちの農業に当てはめて基準をこなしていく事がGAP取得への道です。
GAPの基準文章を読み解く
ではこの「基準文書」とはどんなものなのか見てみましょう。
基準文書には大きく分けて4つの観点があります。
それは「食品安全」「トレーサビリティ」「労働安全」「環境保全」です。
安心で安全な農業を目指すものたちにとって実践すべき項目が全て網羅されていると言っても過言ではない厳正で厳格な基準文書となっています。いわば優良農家が目指すべきためのルールのようなものです。
現在、私たちOPENSAUCEグループの農地所有適格法人(株)KNOWCHでもG.GAP認証取得に向けて取り組みを続けており、その具体例を内容と共に紹介します。
食品安全の項目100個程度
基準文書を使用して、一例を挙げます。AF3では衛生について述べられています。下記の画像は、AF3.1の衛生についてのリスク評価です。
ここでのポイントは「リスク評価」という単語です。説明しますと、生産環境で衛生に関わるリスク(危険)を明らかにして文章化していますか?という事です。
また、リスク評価は「想定される危害」「危害の要因」「対策・改善」の3つを含んでいなければなりません。
施設 農機具 | 想定される危害 | 危害の要因(物理的・化学的・生物的) | 対策 |
---|---|---|---|
倉庫内 | トイレの汚染 | 使用後のトイレの汚れ(物理的、生物的) | 毎日の点検・清掃・点検表の記録 |
2階の汚染 | 床の汚れ、ゴミ捨ての汚れ、手洗い場の汚れ(物理的) | 毎日の点検・規定日の清掃・ゴミの確認 | |
倉庫内の汚染 | 床の汚れ、ゴミ捨ての汚れ、手洗い場の汚れ(物理的、生物的、化学的) | 使用後の清掃・月に1度の大掃除(水撒き・クリーナー等) | |
冷蔵庫内 | 冷蔵庫内の汚れ | 搬入の際の汚れ・生産物に付着した汚れ・(物理的、生物的) | 搬入の際は汚れを落とす・生産物搬入の際は清掃・確認を必ず行う・ 調整前と調整後の保管は冷蔵庫を分ける・使用後の清掃 |
外来生物による汚染 | 生産物の害虫付着による汚染(生物的、化学的) | 搬入の際は生産物を洗浄する・調整前と調整後の保管は冷蔵庫を分ける・定期点検・使用後の清掃 | |
調整場内 | 調整場内の汚れ | 生産物の汚れ・排出される残渣による汚れ(物理的、化学的) | 使用前後の点検と清掃・規定日の大掃除 |
外来生物による汚染 | 害虫、ネズミの侵入による汚染(生物的、化学的) | 扉の閉め忘れ・防虫資材の設置・生産物搬入の際の確認 | |
作業者 | 作業着による汚染 | 作業着に付着した汚れ(物理的) | 指定された場所での着替え・作業着の洗濯 |
作業者による汚染 | 顔、手などに付着した汚れ(物理的) | 付着した汚れの洗浄 | |
ケガによる汚染 | 皮膚の切り傷による汚染(生物的) | 傷口の手当て・侵入前の確認 | |
感染症等の病気による汚染 | 感染症による被害や汚染(生物的) | 出勤時の健康状態のチェックもしくは侵入防止 | |
飲食による汚れ | 飲食による床等の汚れ(物理的) | 侵入時の確認・清掃 | |
来訪者 | 来訪者の衣服による汚れ | 来訪者の汚れ(物理的) | 来訪者のチェック・訪問時の注意事項の案内 |
来訪者による汚染 | 顔、手等に付着した汚れ(物理的) | 付着した汚れの洗浄 | |
来訪者のミスによる汚れ | 衛生に関する認識の違いによる汚染(物理的) | 訪問時の注意事項 | |
道具 | 農機具の汚れ | 農機具の汚れ(物理的) | 使用後の清掃 |
農機具 | 刈り払い機の汚染 | 刈り払い機の汚れ(物理的) | 使用後の水洗い |
ハンマーナイフモアの汚染 | モアの汚れ(物理的) | 使用後の水洗い | |
動力噴霧器の汚染 | 動力噴霧器の汚れ(物理的、化学的) | 使用後の水洗い |
AF3.1 衛生に関するリスク評価 更新日 2019/10/27 ※スクロールできます(PC推奨)
上記の図はKNOWCHで作成した衛生に関するリスク評価です。GAPは自分たちに関わる事ですから、自分たちで考えて作成するしかありません。
リスク評価を行って終わり、ではなくリスク評価で挙げられた事が対策・改善・実施されてなくてはいけません。
一例ですが上記の写真はKNOWCHの調整室の入り口です。AF3.1で挙げた来訪者に対するリスクの対策として、来訪者への注意事項が書かれています。
トレーサビリティの項目20個程度
トレーサビリティとは、日本語訳で「追跡可能な状態」と訳されます。
その農産物がどこの圃場で生産され、どのような栽培方法で、どんな農薬・肥料を使用して作ったかが求められます。また、それらの生産履歴を追跡可能な状態にしなくてはなりません。
つまりは、生産から出荷までの全てを網羅・記録できていなくてはいけません。現在KNOWCHでは、日誌・記録用アプリ等を利用してこれらを作成中です。
労働安全の項目30個程度
次は労働安全についてです。下記の画像は基準文書のものです。
私たちKNOWCHの調整場に着目して一例を挙げます。下記の画像は調整場に掲示してあるリスク評価表です。
その中で、農機具の接触による怪我が明記されています。そこで私たちは対策としてフォークリフトや農機具が侵入してはならないエリアを定めました。2枚目の写真がそのエリア線です。
環境保全の項目70個程度
GAPは環境保全についても定められています。AF7では環境保護が述べられています。
下記の画像は、AF7.1.1の農業が環境と生物多様性について与える影響についてです。
ここでは「農場に関わる生物の保護に努めていますか?」また、「それらは生物多様性を維持するための行動計画書はありますか?」という事です。
KNOWCHでは、行動計画書を作成しそれを実践しており、農業に関わる生物多様性の保護・環境保全に努めています。
下記の画像はその一例で生物多様性を高めるための圃場のリスク評価を行いました。
危害に関連する行程 | 想定される危害 | 危害の要因 | 防止措置 |
---|---|---|---|
農地に隣接する土地の雑草繁茂 | 収量の減少・害獣による農地の荒らし | 農地に隣接する雑草繁茂による藪化 | 野生鳥害被害を防ぐため、隠れ場所になり得る藪を定期的に刈り払い機で除去。また、早めの土作りを心がける。 |
化学肥料の施肥や農薬散布 | 圃場周りの環境や水質の変化により生態系が崩れる恐れあり。 また、構成される生物種の減少による特定の生物種の増加・減少が危惧される | 化学肥料・農薬による土壌汚染や水質の汚染 | ・農薬の使用は最小限に抑える(IPM活用) ・圃場周りを巡視、また農協等の情報を仕入れ病害虫の発生を早期に予見して農薬を散布する。 ・生き物調査の実施による生態系の把握 |
除草剤散布 | 除草剤散布による土壌・水質の汚染 | 農地に隣接する土地(畔を含む)は除草剤を使用せずに刈り払い機を使用する。 | |
土壌の枯渇 | 連作・耕作放棄による土壌内成分、微生物の減少 | 連作や耕作放棄を可能な限り避け、積極的な早期の有機堆肥の使用により、土壌の肥沃度を高める。 |
KNOWCHの生物多様性を高めるためのリスク評価表
このリスク評価に沿って農業を実践しています。
今回は「化学肥料の施肥や農薬の散布」の部分を説明しておきます。
危害に関連する工程が化学肥料の施肥や農薬の散布です。それにより考えられる危害、その要因を挙げ、その防止措置で「生き物調査」をKNOWCHでは行っています。
下記の画像を参考にしてもらうとわかりやすいですが、生き物調査を定期的に行いここの環境はどのような生態系が築かれているのかや、それに伴い生物の過度な増減はないか等を把握・調査しています。
もし、この定期調査で過度な生物の増減があった場合は、農業によって生態系を破壊している事になりますから、農薬の使用を控える・農薬を変更する等の措置が必要になってきます。
最後に
今回紹介したものはGAPのほんの一部でしかありません。GAPを認証取得するというのは長く大変な道のりですが、それだけ生産効率面・食品安全面・労働安全面等の効果が大きいという事です。
現在、KNOWCHでは安心で安全な農作物を作るために、またそれらを証明するためにGAPの取り組みに励んでいます。
text:Aoi Takata
(本稿はOPENSAUCE元メンバー在籍中の投稿記事です)