2018.12.11

ニューヨークのホットドッグ

ニューヨークの摩天楼

ニューヨークという地名から連想する食べ物といえば、僕はホットドッグをあげる。

小学生の頃、我が家はレストランを営んでいた。両親は忙しく学校から帰ると、おやつと言えば人参(もちろん皮付き)、きゅうり(みそは自分で)、煮干し(いま思えば高価)、オードブル用のピザの耳(これは今でも好き)などがおやつの定番であった。

しかしそんな忙しい中、父が時々作ってくれた贅沢な一品がある。

それは、ナイフで切れ目を入れたロールパンにバター、粒マスタードを少々、そこにシャキシャキのレタスをしき、フライパンで軽く炙り、ケチャップソースをからめたウィンナーをギュッと挟んだ「ホットドッグ」だ。

その丸っこいウィンナーを挟んだパンは、テレビアニメの「トムとジェリー」やアメリカのホームドラマに登場するような、細長いパンからソーセージがびょんと飛び出てくるやつとは違った。けれども料理人の父が「ホットドッグ、食うか?」と言って作ってくれるので、きっとこれも「ホットドッグ」の一つなのだと思っていた。

これが、僕の「ホットドッグ」原体験であり、好物になったきっかけでもある。

それから十数年後、少年も大人になり、キラキラ光るジュラルミンケースのようなアメリカン・エアの機体にドキドキし、初めてのNYに降り立った。仕事での渡米であったが、裏テーマとして本場のアレを食すと決めていた。できることなら街中のスタンドで買い、コーラを飲みながらアレを食したいと思っていた。

昼時に、ついにそのチャンスは訪れた。ライオネル・リッチー似の店員に恐る恐るに近づき、「ハッダッグ」を一つくれと言った。本場だからやっぱり「ホットドッグ」ではなく「ハッダッグ」だろうと、このアジア人青年はニューヨーカーを気取ったのだ。空腹と高まる期待感で「ハッダッグ」と連呼したが、いまひとつ通じないどころか、まあまあ恥ずかしい。結局、買えたものの「ホットドッグ」の方が通じたことがとても残念で仕方なく、ほろ苦いNYデビュー戦であった。

気を取り直して公園で食べた初めての「ハッダッグ」は、想像以上にソフトな食感のパンに、弾力があって肉汁が弾けるソーセージ、日本にいたら普段あまり食べることのないファットなとろとろのチェダーチーズ、そして甘めのケチャップとマスタード。たぶん日本で同じものを食べたら、それほど感動はなかったと思う。摩天楼に囲まれたNYのど真ん中で食べたからこそなのだろう。

ホットドッグの歴史

さて、そんなホットドッグの歴史。

アメリカのドイツ系移民が、「ホットドッグ」という商品を発明し、世に広げていったことは確かなようだ。一方で、ホットドッグの主役たるフランクフルトソーセージ、ウィンナーソーセージを生み出したドイツ、オーストリアでもパンにソーセージを挟んで食べ始めたのは我々であると起源を主張している。ここでは、細長いパンにソーセージを挟んだ謂わゆる「ホットドッグ」がどのような歴史を経てきたのかについて触れてみたい。

まず起源について諸説あるが、1860年代にドイツ系移民が、ニューヨークはマンハッタン南部のバウリー地区でソーセージにザワークラウトを添え、ミルクロール(テーブルロールの一種)に挟んでワゴンで販売していたという。また、1871年には、ドイツ系移民のパン屋、チャールズ・フェルトマンがニューヨーク近郊のコニー・アイランドでホットドッグスタンドを始めたことが起源という説もある。

そして、そのニューヨークで生まれたホットドッグは、いかにして広まったのか?

こちらも諸説あるが、例えばチャールズ・フェルトマンの使用人のネイサン(Nathan’s Famous Hot Dogsの創業者)が、ホットドッグ専門のワゴン販売を全米各地に展開、また1893年に開催されたシカゴ万国博覧会で手軽な食事として評判になったこと、さらにセントルイスを拠点にしたプロ野球チームのオーナーが、球場でソーセージを販売したことなどが広まったきっかけと言われている。ただし、この頃はまだ「ホットドッグ」という名称は存在していなかった。

では、その「ホットドッグ」という名はどこからやってきたのか?

「ホットドッグ」の名称の誕生には二つの説がある。まず、1901年、まだ肌寒い春先のポロの大会にて、ワゴン販売員の「”They’re red hot! Get your dachshund sausages while they’re red hot!” (熱い熱いダックスフントソーセージはいかがですか!熱いうちに召し上がれ!)」という掛け声を、取材していた新聞社の漫画家が編集都合で短縮し、「Hot Dog」とした説。次に、1894年、アメリカ東部のイェール大学の寮内で「ドッグワゴン」という店が「ホットドッグ」を販売していたという説である。

ここまで「ホットドッグ」の歴史について紐解いてきたが、記録に残っているもの、口承だけなどで根拠が怪しいものなど様々である。ただし、一つ言えるのは、ドイツ人はソーセージだけでなく、個性的な容姿のダックスフントもアメリカに持ち込んできた。「ドイツ人」「ダックスフント=犬(ドッグ)」「ソーセージ」といったいくつかの要素が絡み合い、長い歴史を経てアメリカにおいて「ホットドッグ」が誕生してきたのではないだろうか。

Hot Dog History From the National Hot Dog and Sausage Council

https://www.hot-dog.org/culture/hot-dog-history (参照 2018-12-12)

お腹がすいたから食べる、カラダによいから食べる、生きるために食べる。いろんな食べるがありますよね。なかでも、僕は大切な人と一緒に美味しいを分かち合って食べる時間が好きです。「いただきます」から始まって、「ごちそうさま」で終わる時間。食卓を囲んで、お腹も気持ちもいっぱいになって、「あぁ、今日も良い一日だったな」と思えるこのシアワセな時間を、より多くの人が過ごしてもらえるように農業、食を楽しむ場の提供、そして醸造の仕事を通して伝えて行きたいと思います。