2022.06.21

飲まない生き方 ソバーキュリアス【私の食のオススメ本】

ソバーキュリアス 表紙

  • 書名:飲まない生き方 ソバーキュリアス
  • 著者:ルビー・ウォリントン 訳:永井ニ菜 
  • 発行所:方丈社
  • 発行年:2021年

ルビー・ウォリントンは英国生まれの記者だ。
現在はNYに住み<Club SÖDA NYC>を共同設立。ミレニアム世代の若者の間でムーブメントとなっているソバーキュリアス=Sober Curiousを提唱している。本人も過去、ソーシャル・ドリンカー、つまり酒の席が好きでザルのように飲んでいた。それがある日、酒を飲むことに疑問を持ち、その疑問を検証していったのである。

結果、酒を飲まないこと、シラフこそクール!あえて飲まない生き方、それがソバーキュリアス!となったのである。

sober=シラフとcurious=好奇心が強い、を合わせたた造語。お酒は飲めるがあえて飲まない、もしくは少ししか飲まないことを選択するライフスタイルのこと。

自分の周りのオジサンたちにも同じようなスタイルに移行した人間が多い。コロナ禍も動機になっている部分もあるかもしれない。ミレニアム世代でなくても、このような考え方には少し憧れる。それは自分が以前の著者のように、まだアルコールというよりはソーシャル・ドリンカーの部分が断ち切れていないところがあるからだろう。

「酒をやめると気分は良くなるのか」「仕事の能率は上がるのか」「もっと自信がつく?」「飲まなければ痩せる?若返る?」「セックスはどうだろう?」「回数やクオリティは?」「楽しいほろ酔い気分はもう味わえない?」「つまらないやつと思われたらどうしよう」「それ以前に自分も人生も、どれだけつまらなくなるんだろう?」

著者は、酒にこのような疑問を一つでも持てば立派なソバーキュリアスな<ソバーキュリアン>だという。この本は、なるほどその通りだね、と酒との訣別の道へ歩き出させる。ただし、彼女は医師でも脳科学者でもない。先に書いたように、酒との付き合い方における疑問の答えを見つけていったのである。

ソバーキュリアスを選択するとどうなるのか?

  • 睡眠のリズムが整い、ぐっすり眠れて疲れがとれる
  • 肌のトラブルが解消する
  • 自信がみなぎる
  • 生産性がアップする
  • 不安が軽くなる
  • お金がたまる
  • 人生に希望、活力、ときめきを感じる
  • 寝たくもない相手と寝ることはなくなる

だそうだ。

彼女は<ありがたいことに>ソバーキュリアンでないと何が問題で、どう考えればそうなれるかを300ページ以上にわたって整理し、まとめてくれたのである。

アルコールデビューで失敗し、90年代にマリファナとエクスタシー錠で脳みそと拒食症の体を構成し引きこもりつつも大学を首席で卒業する。そこから救い出してくれたのはアルコールだったという。そしてサンブーカの勢いを借りて付き合った男が(たぶん)現在のパートナーらしい。そんなエピソードを持つ彼女の方向転換の技が書かれている。

しかし、問題がある。これは飲酒あるいはアルコールとの訣別について書かれているのだが、それぞれの酒の旨さに惹かれるということについては書かれていないのだ。自分をソーシャル・ドランカーに分類してしまったが、実はこの<味を知りたい>が目的であることも多いのだ。

が、飲まない生き方が増殖しているのは確かだ。酒は百薬の長というのもほぼ嘘らしい。今ではニコチンもなくTHCを抜いたCBDも自由に使用できるようになった。飲酒との付き合いが変われば、食文化も変わるのだろう。すでにフレンチのコースでもワインなどの酒を頼まない人たちも多くなってきている。この本を読みながら酒と食の未来を想像することも必要だと思う。

WRITER Joji Itaya

出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。