2021.08.25

八百森のエリー【私の食のオススメ本】

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  • 書名:八百森のエリー
  • 著者:仔鹿リナ
  • 発行所:講談社から各WEB版に移行
  • 発行年:2020年

作者、仔鹿リナは実夫を題材にした『うちのダンナは野菜バカ(本当にあった笑える話)2015年』という著作もあるほど野菜に特化した(笑)漫画家といえる。本作『八百森のエリー』はモーニングKCで連載が打ち切りになり単行本も途中で終わったのだが、まだ書きたいと発表の場をWEBに移した。

宇都宮育ちで宇都宮の短大で美術を学びデビューした作者はもともと企画ものが多かったようで、家族から宇都宮中央卸売り市場、宇都宮大学、小売店、生産者、新聞社と、その取材力(構成力)にも長けている。

amazonや各漫画サイトで直販することで、男性中心の雑誌層から年齢、性別とものに読者層を広げたと思われる。また、市場や農業生産者の話にしては、読者の推しメン的な展開にもなりそうなメインキャラクターたちの力も大きい。

農業女子という言葉がうまれて時間が経ったが、仲卸女子もそろそろ出てくるのでは。

本作は青果市場の仲卸会社『八百森』に就職した若者たちの物語。国立大学の農学部から新卒で入った主人公・エリーこと卯月瑛利と、金髪リーゼントの栃木県真岡のいちご農家の息子・大虎倫珠のコンビがさまざまなアクシデントを乗り越えながら仲卸の重要性やあるべき姿を学んでいく。

大学のゼミの教授などの関係もうまく使っていて、時折でてくる農業の現状のことやデータもストーリーの中で面白く伝わる。

これまでの料理漫画などでは料理人と魚市場の目利きと阿吽の呼吸のようなものがよく描かれていた。しかし、ここでは一般家庭に直結するスーパーや小売店とのやりとりや信頼、そして生産者との関係を軸に描かれていく。

破損した大量のスナップエンドウをかれらのアイデアと努力で廃棄を防いだり、事故で運べなくなった玉ねぎを辺鄙な場所にある個人店まで代わりに運ぶことで、自分たちの仕事がどれほど重要かを知ったりする。

また、農家をとおして、ブランドとは何か、スーパーが高値の時期にセール販売をする意味などを知ったりするが、読者は読み進みながら、一個の野菜や果物がいかにして自分たちの口に入るかを知る。

仲卸の必要性を説くシーン

コメディータッチな展開なので、そこに描かれる仲卸としての情熱を伝えるセリフも、あるべき姿の語りも矜持もすんなり受け入れられるのが面白い。

WRITER Joji Itaya

出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。

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