2020.06.19

アダンのごはん/せっちゃんの和えもん【私の食のオススメ本】

  • 書名:アダンのごはん/せっちゃんの和えもん
  • 著者: 料理と文/藤村節 文/河内一作
  • 発行所:アダンファームBOOKS
  • 発行年:2010年

アダンは、エスニック料理レストラン&バーのはしり、青山スパイラルの「CAY」や「クーリーズ・クリーク」などを作った河内一作が創業した東京の料理店だ。

河内一作はアダンを作るときに、ヘアーメイク&スタイリストをやめ70年代にロンドンからインド、ネパール、チベットと世界中を旅していた旧友、せっちゃんこと藤村節に、「いつかみんなに、せっちゃんの料理を食べさせたい」という予てからの願いを実現させるべく、料理人になることを頼んだ。

せっちゃんは旅がきっかけでマクロビオティックを学んでいたのだが、アダンで出した和ベースの島料理的なメニューでその才能が知れ渡ることになる。

忌野清志郎はじめ多くのミュージシャンやアーティストが通った。晩年の渡辺文男さんが通ってきた。

関西人のせっちゃんは本を作ることになったとき、テーマを手で和える、手の温かみや心が伝わる「和えもん」にした。

筆者は出来たばかりのアダンに通い、泡盛やラム酒などをひっかけ、この本にあるゴーヤのおかか酢醤油やホタルイカとウドの辛し酢味噌和えを食べた。

吉本ばななは、当時2010年の公式日記でこう綴っている。

『お料理本というよりも、ひとつの文化の本。「ぐ」にしても「アダン」にしても、あるタイプの大人たちが、どうやって人生を生きて行くかを真剣に考えてできたお店。その文化は継承されるべきだし、消えないだろうと思う。せっちゃんはいつも笑顔ではきはきごはんを作っていたけど、あのお店はいつも満席で、どちらかというと業界の(でも元ヒッピー世代)人たちがいっぱいで、休むひまなんて全くなさそうだった。そうか、たいへんだったんだ…としんみり思う。今はチビが学校に行っていてなかなか行けないけれど、あの味は体にちゃんとしみこんでいる。マグロとアボカドの和えたの食べたい!あそこのモヒートも今すぐ飲みたい!』

和えものに挑戦しようとするなら、和食の料理本からではなく、この本から始めるのがいい。

文章を読みながら、和えもの素晴らしさを味わえる。

WRITER Joji Itaya

出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。