- 書名:ダンス・イン・ザ・ファーム 周防大島で坊主と農家と他いろいろ
- 著者:中村明珍
- 発行所:株式会社ミシマ社
- 発行年:2021年
著者、中村明珍(みょうちん)はチン・中村さんだ。パンク・バンド「銀杏BOYS」で現在俳優でもある峯田和伸とともにステージで暴れ回っていたギタリストだ。2013年に同バンドを脱退。僧侶修行の後、一家で山口県周防大島移住。野菜農家を営んでいる。
この本は人生のDIYの本である。DIYでない人生があるのか。いや、DIYしている人間の方が少ないのではないか。生きることを、何年もかけて完成形のない家を建てるように作っていく。そんな思いに至る本だ。
農業をやりたい!と漠然と思っている人も、計画中の人も読んで損はない。農業を目指す人に、この本はためになると書かないのはなぜか。これは著者のメモであってみんなが使える参考書にはならないからだ。しかしながら、考えることを考えさせてくれる。そこに気づけば良い。
著者はよく観察をする。島の人々、周りの農家の仕事、天気、子供の変化・・自分。そして考える。
「それぞれの農業がある」と著者は言う。例えば、有機農業ではジャガイモ30キロ収穫のために30株の植え付けで済むが、不耕起の自然農では100株が必要。島で「自然農」を続ける夫婦は自給用の田んぼでの不耕起は畑の草がはびこるので断念。それでも畑のみ自然農を続ける。
また、マルチ(畑によくある黒いシート)を張らないと、玉ねぎが大きく育たないので話し合いの結果使用したが、そこのところだけ草が生えないのをみて「気持ちが悪い」と逆に外してしまう。「自分の身体感覚に沿った判断」というものがあるのだ。
日本の農業生産量を上げるために、農業に従事しやすい社会環境を作ることは今とても重要だ。しかし、農業を行う目的は一つではないのだと改めて考えさせられた。
出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。