金沢・片町のA_RESTAURANTでは、コースの料理のそれぞれに、ノンアルコールドリンクのペアリングをご提供しております。
バーマンによる独創的な発想から生み出されるA_RESTAURANTのノンアルコールペアリング。
本記事では、固定概念にとらわれず、他では類をみないドリンクたちのペアリング要素やレシピ、発想や思考の一部を解説いたします。
今回は、2021年4月のA_RESTAURANTコースメニューと、ペアリングドリンクのレシピをご紹介します。
Intro:宮崎マンゴー
ペアリングドリンク:モーリシャス ビーチ
焦点 : リゾート
マンゴーを使った一皿目には、南国のリゾートをイメージした華やかなモクテルをペアリング。
ハイビスカスティー特有の酸味がアジの酢〆の酸に同調し、マンゴーの甘みをより引き立てる。桜が満開になった頃にスタートした今回のコースだが、卓上では季節を先取りした常夏の楽園。リゾート地のビーチでビキニなんか着ちゃって。冷えたカクテルを傾けるセレブになりきる。
ハイビスカスティー(約6杯分)
- ハイビスカス × 4g
- お湯 × 300ml
- 1883 ストロベリーシロップ × 30ml
- 1883 ブルーベリーシロップ × 15ml
- エディブルフラワー(ガーニッシュ)
ハイビスカスを2min30sec抽出し急冷。シロップを注ぎステア。クラッシュアイスを敷き詰めたカクテルグラスにシロップをミックスしたハイビスカスティーを45ml注ぐ。
エディブルフラワーを飾る。
Interlude : フラン Verse : Tamal ラムの胸腺 – 2皿
Pairing Drink : フラン・ラ・フランス
焦点 : 凝縮したうま味
アサリ出汁のフランにはギューッとうま味の凝縮させたドリンクを合わせたいと思う。
普段はフレッシュフルーツの果肉やピールからエキスを抽出することが多いのだが、今回は濃縮がキーワードなのでジュースを使用。マスカットジュースをラ・フランスのフレーバーティー茶葉と一緒に煮詰め、超濃縮ジュースにする。
ここに、菌が活発になる程度の糖を溶かし込み、僕が培養しているコンブチャのスコビーを加え発酵させ、糖度を下げつつ発酵からくる酸やうま味を作り出す。
発酵の度合いはフランの中のウドの苦味にも合うよう糖度調整しバランスを取っている。
フランというメニューを見て、雑貨屋のフランフランに掛けたダジャレきっかけで作り始めたとは、今更誰にも言えない…
甘みや酸味をしっかり感じ、フルーツを凝縮した味わいのコンブチャなので、ラムの胸腺の独特な匂いもサラッと流してくれる。
自家製コンブチャ(約25杯分)
- ココファーム / マスカットジュース × 900ml
- MLESNA TEA HOUSE / LA・FRANCE × 2TB
- フレッシュ ライムジュース × 15ml
- 自家製コンブチャ スコビー × 適量
- グラニュー糖 × 60g
- レモンピール
マスカットジュースを鍋で沸騰させ、ラ・フランスのティーバッグを加え中火で煮詰める。
15minほど煮詰め、濃く抽出できたか味を確認し火を止める。グラニュー糖を溶かし急冷。フレッシュライムを絞り味を軽く締める。
保存瓶でコンブチャスコビーを加え発酵(2~3日)。味を確認し、濾してボトリング。
※同じものを再度作る際は、完成したコンブチャのスコビーと液量の1割のコンブチャを加え発酵させる。
グラスにコンブチャを30ml注ぎ、レモンピールをフチに添える。
Bridge : 九絵
Pairing Drink : アブサン0%
焦点 : ハーブ
クエの天ぷらにハーブのソースを添えた一皿には、アブサンなどハーブ系のリキュールを合わせるイメージで自家蒸留する。
アブサンの代表的な原料であるニガヨモギなど15種類のボタニカルをゆっくり丁寧に蒸留。このノンアルコールスピリッツが大昔からあれば、あの天才画家も壊れることなく長生きしたかもしれない。
アブサン 0% (約10杯分)
- ワームウッド(フレッシュ) × 8g
- フェンネル(フレッシュ) × 7.5g
- セージ(フレッシュ) × 3g
- バイマックル(フレッシュ) × 1g
- フレンチタラゴン(フレッシュ) × 4g
- ダンデリオン(フレッシュ) × 7g
- アンゼリカ(ドライ)× 2g
- リコリス(ドライ)× 3g
- ダンデリオンの根(ドライ)× 3g
- ジュニパーベリー(ホール)× 2g
- コリアンダーシード(ホール) × 2g
- 実山椒(ホール/フレッシュ)× 1tsp ( 4g )
- スターアニス × 5g
- レモンピール × 1個分
- 水 × 600 + 400 = 1000ml
ハーブ類は軽く手で叩き、スパイス類はすり鉢で軽く潰してから濾し袋に入れる。ハーブ類は浸漬して蒸留。濾し袋のスパイス類とレモンピールは水蒸気蒸留。 水600mlで蒸留し、水が1/3ほどになったら400ml追加。600mlほど蒸留できたら蒸留を止める。
蒸留は全般的に最初と最後はあまりいい味・いい香りではないので、中間のいい部分だけを抽出。
完成した蒸留水120mlに対しフレンチタラゴン(フレッシュ)を4時間ほどインフューズさせ、レッドダンデリオン1枚を入れたグラスに60ml注ぐ。
Chorus : 別海和牛
Pairing Drink : Smoke on the Water
焦点 : 焼けた香り
お肉の焼けた香りに燻製の香りを溶け込ませたお茶を合わせる。煎った大麦の香ばしさと、お茶のタンニンでお肉の脂を包む…というのは建前で、前々から飲み物でスモークマシンを使えないかと機を狙っていた。
スモークマシンを使ってSmoke on the Water と名付けた飲み物を出したい。ステージ上のスモークの様にデキャンタから上がる燻煙。その中から目の前で注がれるドリンク。口に運ぶ際はぜひあのイントロを脳内再生していただきたい。
大麦茶 (約18杯分)
- 大麦(バーリーマックス)× 100g
- 烏龍茶茶葉 × 5g
- 水 × 1300ml
スモークマシン
・ウイスキーオークチップ × 適量
- 大麦を鍋で乾煎りし水を加え沸騰後10min煮詰める。
- 烏龍茶茶葉を加え一晩冷蔵庫で寝かせ、濾してボトリング。
- デキャンタにウイスキーオークの燻煙を溜め込み、必要量の大麦茶を注ぎすぐに蓋をする。
- ワインのデキャンタージュのように、中の液体を回し煙を液体に溶け込ませる。
- グラスに60ml注ぐ。
Solo : 桜吹雪寿司
Pairing Drink : ガリ
焦点 : 寿司
今回のコースのお食事部分。お寿司に対し、お椀ものを付けずにドリンクを皆さんに飲んでいただく。”お寿司に合う飲み物をペアリングとして出す”ではなく、”お寿司に添えるものを飲み物にする”という考えで出したいと思い、真っ先に思いついたのがガリだった。
僕の馬鹿げた考えに慣れている方はともかく、バーマンが突然”こちらはガリです”とグラスに入った液体を持ってきてウケるか心配だったが、予想の遥か上をいくハイクオリティなドリンクとしてのガリが完成したので自信があった。
ガリベース (約25杯分)
- 葉生姜 × 300g
- グラニュー糖 × 200g
- 金沢ヤマト醤油 / 米糀パウダー × 100g
- 合わせ酢(りんご酢 1 : 米酢 1 : 穀物酢 1)× 300ml
ガリ
- ガリベース × 15ml
- FEVER TREE premium soda × 15ml
- クラモト氷業 / ダイヤアイスM × 1
- 葉生姜の葉 × 1 (ガーニッシュ)
- 能登大谷塩 × 適量
合わせ酢はブレンドし沸騰直前まで火入れし軽く酸を飛ばす。
葉生姜の葉を切り落とし洗う(ガーニッシュに使う)。
葉生姜の根の部分はスライス。茎の部分は小口切りにする。
保存瓶に刻んだ葉生姜の根と茎、グラニュー糖を交互に入れ、葉生姜全体をグラニュー糖でまぶす。
グラニュー糖の浸透圧で葉生姜のエキスを搾り出し、グラニュー糖が溶け切ったら米糀パウダーと合わせ酢を加え発酵させる。
1日室温で発酵させ、味をみてストレーナーで濾してボトリング。
グラスに入れたキューブアイスの下に葉生姜の葉を敷き、ガリベースを注ぎソーダアップ。
軽くステアし、氷の上に少量の塩を乗せる。
Outro : Meli Mato / パパイヤ Thai 2品
Pairing Drink : アップルパイ
焦点 : 再構築
※Outroは好評につき3月のコースと同じものです。
元音響エンジニアのバーマン。
外食はコンサートと同じ。料理やドリンク、空間やサービスで楽しいショーを体験する時間。ステージを彩るドリンクで、ショーの一翼を担う。