2021.07.19

鮪のこと

私は16歳の頃、アメリカのニューヨーク州の高校に交換留学生として1年間通っていました。マンハッタンから車で約4時間ほどの距離でしたので、いわゆるニューヨークらしい摩天楼など見るべくもない、のんびりとした田舎町でした。

渡米してしばらくの間は、見るもの全てが珍しく、退屈はしませんでしたが、それもつかの間。一月も経つと、さすがに日本の食事が恋しくなりました。しかしながら、当時のアメリカの田舎町で日本料理のレストランなどはあるわけもなく、ちょっと途方に暮れていたことを今でも覚えています。

また、クラスメートからは、「日本人は刺身(生魚)を食べるから、シーライオン(アシカ)みたいだな」と冷やかされたりしたものです。ところが、今は寿司屋やラーメン屋が人気店として、近郊のショッピングモールに軒を並べているとか。まさに諸行無常の理を表していますね。

鮪を食べる文化と生態系を守る姿勢

鮪を引き揚げる漁船

 米国人のみならず、世界中人々にとって、魚の生食として最も人気のある食材は鮪ではないでしょうか。冷凍技術の発展のおかげで、概ね世界中のどこにいても鮪の寿司を食べることができるような気がします。

もちろん、伝統的に鮪漁を行なっている地中海沿岸諸国をはじめ、実は日本料理以外でも、伝統的に食されているのですが、国別の消費量としたら、やはり今でも日本が世界一です。生態数が激減していると言われているクロマグロに至っては、世界全体の消費量の約7割は日本が消費しております。

ところが、これほどまでに愛すべき食材であるクロマグロを最も乱獲していたのが日本でもあるのです。

ちょうど今頃6-8月がクロマグロの産卵期です。これまではこの産卵期にまき網漁が行われていました。もちろん漁獲量制限はされていたとは思いますが、実は漁獲量には廃棄分は含まれないのです。

引き揚げられた鮪
欧米諸国では素人の釣りであっても釣り上げ数や釣り具などの管理が厳しい

なんでも、まき網で大量に獲ったマグロが漁獲制限を超過した場合は、そのまま海に廃棄しているケースもあるとか。欧米諸国のマグロ漁では、常に監督官庁の監視員が同船し、水揚げ状況を厳しく管理しているそうです。これは素人の釣りの場合も同様で、釣り上げて良い匹数や釣り具に至るまで、厳しい規制があります。

また、同じタイミングで鮪が大量に市場に出回る時期であるため、セリ値も安く、その多くが加工用に向けられるそうです。また、巻き網で獲れる鮪の多くは30kg未満の産卵を経験していない、言わばチビッコ鮪。これらを乱獲したら、そりゃあ、数が少なくなりますよね。

マグロが並ぶ市場

 魚を食べる食文化を発信する際には、どの国よりも日本が生態系を守る姿勢を見せる必要があります。今後、伝承された技術を何代にも渡って伝えていくには、技術だけではなく、取り巻く環境も残していく努力は永遠にやめるべきではありません。

石川県金沢市「日本料理 銭屋」の二代目主人。
株式会社OPENSAUCE取締役