2024.10.11

『発酵文化芸術祭 金沢』へ
出かける前に読む本

2024年10月現在、『発酵文化芸術祭 金沢―みえないものを感じる旅へ 』が金沢21世紀美術館と地域の醸造蔵を舞台に開催中(2024年12月8日まで)。

これは「まちに活き、市民とつくる、参画交流型の美術館」をその特徴のひとつとして挙げる『金沢21世紀美術館』と発酵の専門家や地域の醸造家、観光・まちづくりに関わる企業から構成される『発酵ツーリズム金沢実行委員会』が協業して実施されている、金沢の地で醸される「食と歴史を彩る発酵の芸術祭」だ。

「発酵」をテーマに、アートと発酵文化、さらに「まち歩き」が結びついた「文化芸術祭」であり、金沢という地に最も合った新しい形の観光ツーリズムと言えるだろう。

また、今回、大野地区で行われているインスタレーション会場では、私たちOPENSAUCEの事業プロジェクトには欠かせないクリエイティブ・パートナーの『secca』が作品展示を行なっている。

芸術祭会場(プレスリリースより転載)

OPENSAUCEが運営するA___RESTAURANTは発酵食にも着目した料理やドリンクメニューも提供してきた。そこで使用される器、カトラリー、テーブルコーディネートのコンセプトからプロダクツ製作はデザイン集団seccaが手がけてきた。

プレスリリースにもあるように彼らは「seccaが考える現代の工芸を『巧藝(KOGEI)』と定義し、思想や技能を含めた伝統を磨きながら、未来により良い形で繋げていくことを目指している」。

A___RESTAURANT × secca のこれまでの取り組みは今回の『発酵文化芸術祭 金沢』の原点に近い活動だったのではないだろうか。そう考えると、この芸術祭は本来、発酵とアートと観光のまち「金沢」を拠点とするOPENSAUCEが発案すべき企画であったと考えるに至った。

そして今回の『発酵文化芸術祭 金沢』から(ビジネスモデルとしても)学ぶことは多いはずだ。今後は私たちの活動においても、もっと外に向かって発信することに力を注いでいくべきだと考える。

さて、この『発酵文化芸術祭 金沢』に出かける前に読むべき発酵についての本を紹介しておきたい。RIFFでは過去に本イベントの総合プロデューサーの小倉ヒラク氏の著書「発酵文化人類学(2020年発行)」を取り上げている。

発酵文化人類学の表紙

現在、発酵デザインラボ株式会社の代表を務め、発酵食品専門店「発酵デパートメント」を若者の街、下北沢に開業した「小倉ヒラク」氏とはどんな人か?何ゆえ発酵の世界に入り込み、「発酵ツーリズム」という概念を導き出すことになるのか。読めば現在に繋がる。小倉氏はその後、発酵で日本を、世界を駆け回り、それを著作にあらわし、(本人がいうところの)主体性のない起業をした人だ。

発酵文化人類学 微生物から見た社会のカタチ 小倉ヒラク 著
https://riff.opensauce.co/hakkou-cultural-anthropology-book-review/

そしてもう一冊は、世界で発酵といえばこの人という、Sandor Ellix Katz サンダー・エリックス・カッツ(現在はサンダー・キャッツが日本語通名)の名著
発酵の技法』。微生物による変性作用に驚き、人間ではなくバクテリアや菌類が作り出す、新しい風味や食感。それらが未来のビジネスまで生み出していく。発酵のことなら俺に聞けと言っているかのような分厚い発酵食品と発酵文化の探究書。
https://riff.opensauce.co/the-art-of-fermentation-book-review/

少なくとも『発酵文化芸術祭 金沢―みえないものを感じる旅へ 』の総合プロデューサー小倉ヒラク氏の著書だけでも、Amazon Kindle版にもなっているので芸術祭へ行く前に覗いてみることお奨めする。

金沢における発酵文化芸術祭をもう一歩踏み込んで楽しめるはずだ。
(金沢食藝研究所に参加している方は図書コーナーに「発酵文化人類学」が置いてありますのでご覧いただけます)

追記:こちらの村井裕一郎著「ビジネスエリートが知っている
教養としての発酵」も発酵入門編としてお奨め。600年続く種麹メーカー当主が解説する本。
https://riff.opensauce.co/fermentation-as-education-book-review/



発酵文化芸術祭 金沢』詳細は
発酵デザインラボ株式会社(代表 小倉ヒラク)によるプレスリリースおよび金沢21世紀美術館のサイトをご覧ください。
・発酵デザインラボ プレスリリース
 https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/61720
・金沢21世紀美術館
 https://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=25&d=2078

RIFF編集部(text : Joji Itaya)