2022.12.03

パンどろぼう【私の食のオススメ本】

  • 書名:パンどろぼう
  • 著者:柴田ケイコ
  • 発行所:KADOKAWA
  • 発行年:2020年初版 2022年29刷

いま、パンの絵本といえば柴田ケイコだ。絵本業界では異例な2年間でシリーズ累計130万部発行。この絵本の対象年齢は3、4、5歳〜だが大人にも人気だ。大人用も含めたシュールなキャラクターのさまざまなグッズも人気。

オイルクレヨンで描くシュールなキャラクターをふくめて柴田ケイコは笑いのツボを心得ている。いや、つまらないことで休み時間に爆笑しあう子どもたちと同じレベルで思考しているのだと思う。この読み聞かせ本では、子どもは笑って寝ないかもしれない。

そして主人公のパンどろぼうは、なぜか食パン。世界中のパンを食べてきた。パンを偏愛するパンだ。発想がシュールなのだ。

パンのくせにパンを盗むためにパン屋さんの食パンにまぎれて陳列棚で様子を伺ったりする。激ゆるな『ウォーリーをさがせ』だ。

絵本を読んだ子供たちはパン屋に行くと、陳列棚に「パンどろぼう」を探したりして笑うのである。

──パンどろぼうは、盗んだパンが不味かったので怒って(文句を言いに)パン屋に戻ります──

しかし、このパンどろぼうの実態は・・・

柴田ケイコは大人の怒りを描かかない。これをモットーとしている。

おいしくないパンであったことを謝り「おいしいと思わないなら自分で焼いてはどうか」とパン屋のおじさんは盗みはいけないことと諭した上でやさしくこう話す。

「そうだ自分でつくればいい」

パンどろぼうは諭され、おじさんに謝り、世界中で食べたパンの味を思い出して何日もかけておいしいパンを作り出す。店は大繁盛し、パンどろぼうはパン職人に・・・。

これも食育のひとつだ。

WRITER Joji Itaya

出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。