2021.11.24

張 競 中華料理の文化史【私の食のオススメ本】

中華料理の文化史の表紙

  • 書名:中華料理の文化史
  • 著者:張 競 Cho Kyo
  • 発行所:株式会社筑摩書房
  • 発行年:2013年 2018年2刷

「中国四千年の味」と明星食品中華三昧の広告コピーを糸井重里が作ったのは日本がバブルに突入した頃だ。それ以降、日本人は中華料理の味は4000年の積み重ねなのだと思っていたのではないだろうか。

どう考えてもラーメンのようなものはそんな昔からはないのである。主要穀物などの食物の歴史を考えればわかることだ。解説にもあるが「フカヒレの歴史はせいぜい三百年、現在のような北京ダックはたかだか百年あまり」なのである。

この本は、その辺のモヤッとした中華料理の味の歴史と文化を解明してくれる。「孔子の食卓には何が出たか。食べた肉は?」から現代までをつないでいくおいしい中国文化史が書かれている。

張競氏は上海生まれで、華東師範大学の助教、東京大学大学院の博士課程を修了して、國學院大学助教授、ハーバード大学客員教授を経て明治大学教授という経歴。おいしいものを食べるのも作るのも好きだ、と公言している。

その張氏は、1994年に戻った時、ふるさと中国の食堂のメニューの漢字を見てもなんの料理か皆目検討がつかなかった。NYのベトナム料理店の中国語のメニューも読めなかった。

中華料理は、歴史は政治や異民族との交流と時代によってどんどんと変化する。ある意味、他からの影響を受けやすく、古いしきたりやマナーが形で残っていたりしながらも、誰もが新しいものを生み出すもっともクリエイティブな世界だ。

だからこそ、この本で中華料理の歴史を辿っておきたいのだ。

WRITER Joji Itaya

出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。