2018.11.16

自ら”弱い”ブランディングをしてしまう農家

焼き芋の看板

2019年10月開業予定 レストランスタッフ大募集!

10月某日、OPENSAUCEメンバーでもある葡萄農家の竹中さんに誘われ、「かほく農業青年」という団体に加入することになった。僕は今年で38歳のため、”青年”と呼ぶには少々おじさんなのだが、就業人口の8割が60歳以上の農業界においては、まだまだ若手なのである。
入会して早々、週末に農産物フェスタなるものがあり、その会場で焼き芋を販売するそうで、もちろんメンバーの畑で栽培されたサツマイモを用いる。イベント好きの僕は、古参メンバーよりも早く出席の意思を挙手して伝えた。

イベント当日、露店のようなブースで、年季が入ってええ感じにエイジングされた焼き芋機なるものに火を入れ、十分余熱が回ったところで、通称タッキー先輩(実年齢は僕がだいぶ上。あとジャニーズのタッキーには似てない。)の畑でとれたブっといサツマイモを投入。完成を待つこと10分…まだ固い。さらに待つこと10分…あれ、まだ中が固い。さらに10分…やっと完成(長っ。。)。なんとも回転率の最悪な商品をチョイスしているところが我らの残念なところではある。

KNOWCH村田

この回転率の悪さが原因で、テケテケ農家村田の小さな一揆が勃発することになるとは、この時は誰も想像しなかった。

当日は曇り空での寒さも手伝い、焼き芋の売上はすこぶる調子が良かった。焼きあがると同時に、僕も目が合う人目が合う人誰かれ構わず「お待たせしました!焼き芋が焼きあがりましたよ。(ニコ!)」と、待ってもいない人にまで声をかけ、一生懸命に焼き芋を売った。

9時スタートで14時に終了するイベントだが、10時半の時点で過去最高の売上を記録したと後で聞いた。

小さな一揆は、イベント終盤に差し掛かる13時頃に起こった。

前段で説明した通り、焼きあがりに時間がかかるので、焼きあがった時にはすでに予約分でほぼ完売しているという状態が続いた。そこへ60代のご夫婦が来て「焼き芋ある?」と、僕よりもひとまわり若いメンバーに声をかけてきた。

その様子を見て僕は焼き芋機の上部にある保温庫部分を確認すると、1本だけ在庫がある。この日は1袋(2〜3本)で300円という価格設定をしていたので、1本では通常販売しない予定だった。保温庫を確認する僕に気づいてご夫人の方が「1本でいいから売って」と若いメンバーに言ってきた。「じゃあ1本なので100円です。」と若いメンバーがご夫人に伝えたところ…

”え〜こんなん(こんなもの)1本で100円なんて高い!”と言い出すご夫人

「いやいや、2〜3本で300円なので…汗」と苦笑いする若いメンバー

”え〜もっと安してよ(安くしてよ)”と怒り出すご夫人

普段は接客などしない若いメンバー(農家)は、ご夫人の理不尽な言い分にしどろもどろになって言い返せないでいる。僕は横で、どうなるかな〜と様子をしばらくうかがっていたが、ご夫人の若手メンバーに対する次の言葉に我慢できず、僕の小さな一揆が開幕である。

ご夫人「こんな芋1本で100円なんてボッタクリや」

僕の中で何かが切れた。で、電光石火のごとく

「いいですかお客さん?お言葉ですが、このサツマイモの市場価格が1kgあたり400円します。この芋は控えめにみても300gはあります。そうすると、この芋は生のままでも120円です。この時点でボッタクリとおっしゃった100円を超えています。元々がご奉仕価格なんです。それに焼き芋の加工賃、焼き芋機のリース料、ガス代、僕らの人件費、包装代も本当はかかっています。コンビニでこれを買うと500円はします。お代はお返ししますので、どうぞお引き取りください。」

これを聞きプンプンなご夫人にお代の100円をお返しした。ご夫人が離れたのを確認してから、言い返さなかった若手メンバーにこう言った

「農家もお客さんを選んでいいと思うんですよ。このサツマイモ作るのに汗水垂らして、土かぶって、時間も使ってるってことに価値を感じる人にだけ売ればいいと思うんです。ああいう方には僕は売らなくていいと思います。でも、何でこの価格なのかはいつでも言えるようにしておきましょう。自分たちで”弱い農家”をブランディングしちゃダメですよ。」

食べるための争いも経てきた人類が、やがて種から農作物をつくり、農作物を飼料とした畜産も生み出しました。その後、世界人口の増加に合わせるかのように農業技術は進化を遂げ、今日まで世界の胃袋を満たしてきました。一方で、耕作放棄地、農業従事者の高齢化、フードロス、フードマイレージ、有り余る農作物の国家間の押しつけ合いなど、様々な問題もあるのが現実です。OPENSAUCEの『KNOWCH』プロジェクトでは、問題に農家の視点から取り組みます。