2020.10.12

恵方巻きはキンパ オカンの韓国家庭料理 VOL.5

韓国料理キンパ

韓国には、キンパと言う名の海苔巻きがある。
キム=海苔、パプ=ご飯を意味する。ローマ字表記だと“kimpab”で、韓国語風に発音するとキムパッが正しいだろうか。
今でこそ一般的になったこの「キンパ」だが、実は日本の海苔巻きが韓国に伝わり浸透していったものだ。1960年代頃から大衆的に食べられる様になったという。

さて、我家の食卓に上がる「キンパ」の登場頻度。実は、とても少ないレアなメニューであった。

そもそも、キンパの中身の具材には、様々な野菜のナムル・キムチ・炒めたお肉・新鮮な魚介類・味のアクセントとなる唐辛子やたくあん等が使われ、下準備が非常に手間の掛かるオカン泣かせのメニューなのだ。オカンは、ナムルを作ると先ず「ピビンパ」を作ってくれた。残ったナムルを使い、ひと手間加えたアレンジ料理が「キンパ」なのだが、そもそもが大食漢一家。我家では翌日にナムルが残ること等が有り得なかったのだ。

また、韓国には巻き簾の文化があまり浸透していない。
その為、オカンは海苔巻きを作る機会が殆ど無く、唯一と言ってよいくらい苦手な料理だった。

私が初めて「キンパ」を食べたのは大学生の頃。大阪で韓国料理屋を営んでいた従姉妹の御店に遊びに行った時だったと記憶している。

従姉妹に勧められて、〆の一品として初めて食べたキンパ。ごま油が効いた香ばしいご飯に、たくあんやキムチ、青菜のナムルのシグナルカラー。しっかりと主張のあるオイ(きゅうり)のみずみずしさに牛肉の甘塩っぱい味。全てが主張しているのに、邪魔し合わないこのマリアージュに私は感動を覚えたものだ。

今韓国では、多種多様な種類の「キンパ」が溢れている。鶏卵とベーコンのみを巻いたベーコンエッグキンパ、野菜のみのヴィーガンキンパ、唐辛子を巻いたプッコチュキンパなど、基本的に好きなものを巻いて食べれば正解なのだ。

本場の韓国へ味比べに旅行出来たら良いのだが、このコロナ禍では難しい。お家で手巻き寿司の様に、パーティーメニューとして試してみては如何だろう。

オカンのキンパのレシピ

酢飯じゃなくて、炊き立てご飯にごま油と炒りごまを適量。
巻き簾がなくても、平らな場所にラップを敷いて海苔を準備。ご飯を海苔の上に敷き詰めるのだが、コツとして四方の1cmを残す。後は好きな具材を好きなだけ並べて、一気に巻き込めばあっという間に出来上がりだ。カットした後、卵液を塗してカリカリに焼いてもとても美味しい。

我が家では恵方巻が全国区になってきた頃、海苔巻き作りにハマったオカンが作ってはよく食べさせてくれたのだが、キムチなど具材が韓国寄りになるので「ウチの恵方巻はキンパだね!」と、喜んでその味を噛みしめたものだ。

味がバラエティに富んでいるので、わかめスープや卵スープなどのシンプルな付け合わせがお勧めだ。

是非、皆で楽しくお試し下さい!!

WRITER Taishi Joh

沖縄にルーツを持つ父親と、韓国人の母との間に産まれ、幼い頃から日本食とは一風変わった食卓で育ちました。
転勤族の父親に付いて、全国津々浦々に移り住み、グルメな母親の影響で週に一度は外食をしていました。
それでもやはり、一番好きな食事は母親の手作りです。母も小まめに料理を作り、夕飯の家族一緒の団欒はかけがえのない想い出です。
今でも月に一度の頻度で、田舎の特産品や母親手作りの常備菜が届きます。
そんな私が、もう永住するしかないと決めた大好きな街、金沢。
其処から全国、ひいては全世界に向けて食のあり方を発信することが出来る私たちの会社を誇りに思い、末端ながらお仕事出来る喜び…と、美味しい賄いを噛み締めている毎日です。