2025.05.07

MAKIKO TANAKA
La collection
gastronomique

  • 書名:La collection gastronomique
    ラ・コレクション・ガストロノミーク
  • 著者:田中麻記子
  • 発行所:HeHe(ヒヒ)
  • 発行年:2016年
Mrs.Red cabbage

画家・田中麻記子(敬称略)は「パリへ越して間もなく、街で見かける様々な表情の女性たちに触発され、日課として一日一枚、ポートレイトを描きはじめた」という。「次第にそれらは顔から身のまわりにあるオブジェへと移り、「陶器を描いた作品にスープが加わったことをきっかけに食べ物シリーズへと変化」した。(現在ではまた人物をモチーフにした油絵を独自のタッチで精力的に描いている)

この作品集は「異文化の入り交じるパリに暮らしで出会った食材や料理」がテーマになっている。そのイマジネーションは唯一無二。大胆でおおらかでコミカルでエロティックだ。

ラム
やきそばパン

田中麻記子は1975年生まれで現在はパリ南郊外に住み、水彩、油彩作品の制作を中心に、ショートアニメーションやイラストレーションを制作している。2016年にキュレーターをやっている友人の女性に呼び出されて、白銀台のレストランで開催された田中麻記子の展覧会の展示をほんの少し手伝った。初めての作品集であるこの本の原画展である。開催日の前日の夕方だった。本は出版元から届いたばかりだった。

おかげで展覧会の前日に手に入れたため世界で1番目の購入者となることができた。金沢に移住するまでに別の展覧会にも2回ほど行くことができた。

その後、青山通りのピエール・エルメがネオン官でできたキャラクターで飾り付けられていて、店の人が田中麻記子のデザインしたキャラクターだっと説明してくれて驚いた。そして資生堂の歴史ある広報誌「花椿」に連載が始まり、WEB版ではアニメーションまで制作していた。

作品にはヌード、特に女性が多く登場する。彼女の脳内に住んでいる分身たちかもしれない。モチーフの食材や料理が浮かぶと勝手に分身たちが楽しそうに踊ったり妖艶に絡みついたりするのだろう。

食べ物にこんなアプローチができるのはうらやましい。

Passion(まだ見ぬヴィーガンの魔術師)
大学芋
太巻き
鉄火「にっぽんの心」

田中麻記子の絵は薄暗い炎のもとで描かれたような世界観がある。食べ物の絵なのに明るい色がなくてちょっと不気味という人もきっといるだろう。

でもね、この本を見て食欲が出たらいいなんて考える必要はないのだ。これは見ると身体がモゾモゾしてくる食べ物の本なのだから。

Sadist (豚足)
WRITER Joji Itaya

出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。