Art × Mocktails collaboration
Mandy Baker Project – VIVITA
この夏、開業したばかりの『金沢未来のまち創造館』にて開催されている”プラスチックと未来展”で子供たちのアートと作品の意図から発想したモクテル(ノンアルコールのカクテル)をつくり飲んでもらうというコラボレーションが実現。その工程の記録とレシピをまとめました。
金沢未来のまち創造館1F展示スペースにて2021年9月30日まで開催されている”プラスチックと未来展”
この展示は、VIVITAが世界7カ国で運営するクリエイティブ・フィールド「VIVISTOP」で活動する子供たちと、海洋プラスチックごみをテーマに活動している写真家「マンディ・バーカー」によるコラボレーション展です。
マンディ・バーカーは「作品を見た時に感じる『「美しい魅力』と、作品の持つ『「真のメッセージ』が生み出す矛盾により、作品を見る人の感情を刺激し、この環境問題に対して一人でも多くの人が認識を高めることを目指して活動」してていて、最終的に私たちひとりひとりが実際に前向きな行動を起こすことにつながっていくことを願っています。
そのマンディの作品・想いにインスピレーションを受けた世界の子供たちが、海洋プラスチックごみを題材に製作したコラージュアートを展示しています。
VIVISTOP KANAZAWAでも内灘海岸でプラスチックごみを拾い、きれいに洗い、マンディの活動や海岸で実際に目にしたプラスチックごみの現状で感じたこと・伝えたいことを子供たちがアートで表現しました。
今回、この展示会に向けたワークショップを経て子供たちの感じたこと、それを表現したアート作品を、さらに僕がドリンクで表現して実際に会場(未来のまち創造館3F VIVITA)で提供できないか、ということになりVIVITAとのコラボレーションが実現しました。
海岸で拾ってきたプラスチックごみを使ってコラージュアートを制作するワークショップに、一緒に参加させてもらい、制作真っ最中の子供たちに「どんな想いでこの作品を作っているのか」「伝えたいことは何か」などヒアリングし、それぞれの想いと実際に完成したアートから感じるものをメモしていき、僕の表現したいものをラフスケッチするところからスタート。
ここからはいつもの作業。僕の妄想をどんな材料でどんなテクニックでモクテルとして形にするかの地獄の時間(笑
妄想が大きければ大きいほど実際形にするのに苦戦するもの。だけど、今回はいつもとはかなりの違いがありました。
いつもは料理を引き立てるという大前提の役割があり、ある種主張を抑えたペアリングドリンクを作っている(つもり)けれど、今回は僕の表現したいものを全部ぶつけられる。
大苦戦を予想していたけど、意外にもラフスケッチの段階で、製造工程までだいたい頭の中で組むことができました。
ラフの段階でそこそこの完成度だったので、実際に作ってみても割とすんなり形になった…と思ったら落とし穴。一番最初に思いついて安心していた一杯が全く思い通りにならない…
Citrus cola bomb
- コーラ・・・80ml
- 自家製ライムコーディアルシロップ・・・20ml
- クラッシュアイス・・・適量
- メントス・・・1/2ヶ or パルスイート・・・1.5g
─ garnish ─
・ローズマリー
・エディブルフラワー
ミキシンググラスにコーラを瓶ごと入れ、自家製のライムコーディアルシロップを注ぐ。
抜栓しメントス or 甘味料を投入するとコーラが瓶から吹き出す。
吹き出した勢いでミキシンググラスのライムコーディアルとミックスされ、爽やかなライムフレーバーのコーラが勝手に完成する。
ミキシンググラスからコーラの瓶を抜き取り軽くステアし、クラッシュアイスを詰めたロックグラスに注ぐ。
ローズマリーやエディブルフラワー、ストローを飾り完成。
インスピレーションを受けたアートは、吹き出すようにどんどん出てくるゴミと汚されて困っている海の生き物を表した作品。
海の生き物たちが悲しい顔をしているのに人間はお構いなしにどんどんゴミを出す様子を、花火の袋だろうか”パチパチ”と書かれたゴミの通り、炭酸が噴き出す様子で表現しようと思いました。
“炭酸が噴き出す”で思い浮かんだのはメントスコーラ
昔からおもしろ動画などで有名なコーラにメントスを入れるとコーラが噴き出して、ペットボトルロケットにまでなるアレです。
昔からあるものだしメントス入れれば勝手に噴き出すものだろうと思っていたけど、実際やってみると…ノー感じ!なんでよ!
確かに、よく動画で見るのは1.5ℓ以上の大きいペットボトル。こちとら190mlの瓶コーラ。
量の問題か?底に落ちるまでの距離が必要なのか?しまいにはメントスの味で変わるんじゃないかとまで疑い、いろんな味のメントスを投入する始末。
検証に検証を重ねた結果、辿り着いた答えは”温度”だった
ノー感じだったコーラと同じ条件で、温度だけ違う、常温に戻したコーラだと見事に噴火した!
さらには粉末の甘味料(パルスイートなど)でも噴き出すことも発見!
このドリンクの一番表現したい”噴き出す”はコレで見事クリアできました
ガーニッシュのエディブルフラワーは、噴き出すように出続けるごみで海の生き物が大変なことになっているのに人間は呑気に花なんて飾って美味しいコーラを楽しんでいるという皮肉を表現しています。
Surface Mojito
- 自家製ライムコーディアル・・・10ml
- FEVER TREE GINGER BEER・・・120ml
- バタフライピーティー・・・20ml
- イエルバブエナ・・・適量
- クラッシュアイス・・・適量
グラスにミントの一種イエルバブエナと、ライムコーディアルを入れペストルで数回軽く押す。
クラッシュアイスでグラスを満たしジンジャービアを注ぎ軽くステア。
濃いめに抽出したバタフライピーティーをフロート。
ストローをさしイエルバブエナを飾る。
カラフルな魚と燦燦と輝く太陽が印象的なアートから受けたインスピレーションは…
一見、ポジティブな作品かと思えたけれども、隅には人間が出したごみが溜まっており、綺麗な魚もごみと一緒に生活していて困っている。
ごみを出した人間たちはそのごみで海を汚していることに気づいていない。人間は上っ面の綺麗な部分だけしか見えていない…
というメッセージを感じました。
通常ならば見栄えがいいようにミントをグラス全体に広げるけれど、クラッシュアイスであえて底に沈めたミントで隅のごみ溜まりを表現しており、綺麗な二層の見た目、表面の鮮やかな紫色にそそられて口にすると辛味のある刺激でびっくりさせるためにミキサーはソーダではなくジンジャービア。
”いかに上っ面しか見ていないか”を表現しました。
Black or White
- 無調整ミルク・・・120ml
- シンプルシロップ・・・10ml
- チャコールココナッツ・・・25ml ※ココナッツウォーターに竹炭をプレミックス
- クラッシュアイス・・・適量
─ garnish ─
・チャコールガーニッシュ・・・1枚
※小麦粉と竹炭を混ぜて薄く焼き上げたもの
グラスにミルクとシンプルシロップを注ぎステア。クラッシュアイスでグラスを満たす。
プレミックスしたチャコールココナッツウォーターをゆっくりフロートさせる。
ストローとガーニッシュを飾る。
樹脂製品やゴム製品。黒一色のアートからインスピレーションを受け、炭を使った二色のモクテルに仕上げました。
人間が生活を便利にするために作られた工業製品。その便利な製品を作る際に出た端材。製品も使い古され要らなくなったら捨てられ、正しく処分もせず不法に海に放置される。
海を汚したくないという思いをWhite、便利な生活もしたいという思いをBlackで表現。
海が汚されていく状況を比重を利用してフロートしたBlackがWhiteを徐々に侵していく様子で表していて、
あなたは白か黒かどっち?と問いかける一杯に仕上げました。
ちなみに、召し上がる前にストローでよく混ぜてください。色はwhiteとblackが混ざりgrayになります。
どっちも選べないあなたの気持ちを表現しています。
Truths ?
- 自家蒸留ノンアルコールGIN・・・100ml
- カラーソルト 赤/青・・・適量 ※粒の粗い塩にハイビスカス/バタフライピーで色付け
- エディブルフラワー・・・適量
- スケルトンリーフ・・・1枚
- 炭化シトラス・・・ ※90℃のオーブンで60時間ほど加熱したオレンジやライム
オーブンで炭化させたシトラスの内側を蜜蝋でコーティングしグラスとして使う。
自家蒸留したノンアルコールGINを注ぎエディブルフラワーを飾る。
色付けしたカラーソルトを振りスケルトンリーフを飾る。
VIVITAとのコラボのコンセプトモクテルとも言える一杯
インスピレーションを受けたアートを作った子どもに、アート製作中話を聞くと、小さな貝殻を拾うことが好きでよく海に行くと話してくれた。10mmほどの小さな貝殻なのに表面はツヤツヤで模様もしっかりあってすごく綺麗な貝殻を持ち帰り、妹にあげるとすごく喜んでくれるんだと嬉しそうに話してくれたことがすごく印象的だった。
彼女の作品はそんな綺麗な貝殻と見分けがつかないマイクロプラスチックを海の生き物が間違えて食べてしまって死んでしまうという悲しい現実を表現している。
食べ物なのかマイクロプラスチックなのかわからない。本物はどれ?というメッセージをモクテルで表現しました。
まるで飲み物が入っているとは思えない真っ黒に焦げたオレンジの皮。その中にはまさに生きた自然を感じる、果皮やハーブをふんだんに使ったフレッシュなフレーバーの自家蒸留したノンアルコールGIN。
ガーニッシュのスケルトンリーフは枯れていく自然を表現。
マイクロプラスチックを表したカラーソルトも味をきめる為に必要不可欠なもので、本物はどれ?真実ってなに?を表現した渾身のモクテルに仕上げました。
今回のイベントの真の目的
4つのアートモクテルを完成させましたが、完成して写真に納めて作品として発表することが目的ではありません。
会場でアートを見た子どもたちにこのモクテルを飲んでもらうことが目的です。
イベント的に僕が単発でバーテンディングするのもありですが、展示開催期間中、VIVISTOP KANAZAWAに来た子ども達に飲んでもらい、今回のワークショップに参加していなくてもMandyの想いや海洋プラスチックに関して何か感じてもらうことが真の目的です。
ということでVIVITA CREWのみなさん!レシピを伝授します!
VIVITAの活動として子ども達と一緒に作れるようマスターしてください!!
↑自家製ライムコーディアルをレクチャー。浸透圧でエキスを抽出するためライムカットの技術で抽出できるエキスの量が変わり、同じレシピでも作り手によって全く味が違う。
どっちが良い悪いじゃない。その個性を活かしてカクテルメイクすればいい。
今回、無謀かと思われたArtに込められた想いをMocktailで表現するという試み。
子どもたちの作品に込められた想いを聞き、完成した作品を観るとイマジネーションが溢れ、あり余る妄想力を形にしたい欲求に駆られました。
子どもたちに飲んでもらいたいのでもちろんノンアルコールだけれども、色や飾りで華やかなモクテルを作り、バーマンの仕事、バーやカクテル、いわゆるナイトライフのカルチャー全般を”カッコイイ”と思ってもらいたい。
そこからバーマンでもいいし、ミュージシャンでもDJでもファッションデザイナーでもいい。将来の可能性を広げるきっかけになってくれたら嬉しいと思う。
僕自身も改めて感じた想い
芸術性やメッセージ性の表現は自由。創造は無限だということを子供たちに感じてほしい。
小さなグラスの中にだって想いは表現できるんだから。
子どもたちの想いを職種の違う大人たちがチームを組んで本気で形にする、
ハローベイビー 何かを創る(造る)ってサイコーよ !
元音響エンジニアのバーマン。
外食はコンサートと同じ。料理やドリンク、空間やサービスで楽しいショーを体験する時間。ステージを彩るドリンクで、ショーの一翼を担う。