2019.10.25

『ブレードランナー』「二つで十分ですよ」の正体

2019年10月開業予定 レストランスタッフ大募集!

【映画の中の食 vol.1】

食いしん坊ながらあまり食通とはいえない私ですが、三度の飯より映画好きということで、映画の中に登場する印象的な食べ物を、ここでご紹介できたらと思います。
第一回目は、1982年公開 リドリー・スコット監督作 SF映画の傑作『ブレードランナー』から。

人生のマイベスト10にも入る大好きな作品です。架空未来都市の高層ビル群を空飛ぶパトカーが潜り抜けて行く圧巻のパノラマ映像を、映画館の大スクリーンで初めて観た時のあの感動と高揚。そして、全編に漂う孤独と切なさ。雨に煙るネオン街、レプリカントの潤む瞳、ヴァンゲリスの奏でるむせび泣くようなシンセサイザー音も沁み入ります。

実は今年2019年は、この映画で描かれた舞台の設定年に当たります。この作品は、2019年11月のロサンゼルスが舞台。ちなみに大友克洋原作のSF漫画『AKIRA』も2019年の東京が舞台であり、更に翌年2020年に東京オリンピック開催を控えているという予言まで、1982年発表当時にしているのです。恐ろしや。

さて本題に戻ると、『ブレードランナー』の冒頭シーン。ハリソン・フォード演じる主人公のデッカードは、酸性雨降りしきる繁華街の雑踏の中、1件の屋台に入ります。そして日本人らしき店主に何かを指差し「四つくれ」と注文しますが、店主はすかさず「二つで十分ですよ!」と日本語で返してきます。

illustration: Hitoshi Miyata

諦めのつかないデッカードは「いや、四つくれ」と食い下がりますが、店主は頑なに「二つで十分ですよ!」と言い放ち、デッカードは渋々店主に従い「ヌードルも」と付け加え席に着きます。間も無く注文の品が運ばれデッカードはそれを食べ始めますが、画面にはうどんらしきヌードルしか映りません。肝心の何かが二つ入った食べ物は映ることなくデッカードはやがてやって来た警官たちと去って行きます。

然もないシーンですが、日本語が出てくることもあり妙に印象に残るシーンで、コアなファンたちの間では、屋台で頼んだあの食べ物は一体何なのか?なぜ店主は頑なに二つで十分と言ったのか?と様々な憶測が飛び交いました。

私は勝手に水餃子みたいなものと想像していたのですが、あれは海老天だと言う人もいれば、寿司ではないかと言う人、架空の未来の生き物という人まで。また、店主が頑なに「二つで十分」と主張した理由についても諸説あり、“4”という数字が当時日本で言葉狩り(タブー)の対象となっていたからとか、デッカードが殺すレプリカントの人数の暗示である(本来4人殺さなければならなかったが実際に殺した人数は2人)とか、「秘密戦隊ゴレンジャー」へのオマージュ(第一話でキレンジャーが大盛りカレーを4皿注文するがマスターに「多過ぎて食べれないから2皿にしろ」と言われる。)という説まで。

秘かな二つで十分論争を巻き起こしたシーンでしたが、2007年アルティメット コレクターズエディションが発売され、試写用のワークプリント版も公になると、デッカードが食べていたものがついに明らかになります。
そのシーンがこちら。

なんと二つで十分の正体は、海老天でも寿司でも水餃子でもなく、背鰭のついた深海魚のような生物。その魚が二尾乗った丼をデッカードは食べていたのです。

そしてとにかくこの魚がグロテスクで不味そう。これは二つで十分というか、二つもいらないくらいのレベルです。屋台の店主が必死で四尾食べることを止めた訳が理解できました。苦笑
この映画で描かれた2019年の世界は、環境汚染が進み、空からは酸性雨が降りしきり、新鮮な魚を口にすることも難しく、人々は地球を捨て他の星への移住を進めています。

実際の現在の世界は、ここ数年森林破壊や温暖化によると言われている自然災害などが深刻化しているものの、まだ私たちは新鮮で美味しい食物を味わい、地球生活をエンジョイすることができています。けれどこれから数十年後の未来、この当たり前の幸福が当たり前ではない、もう手に入らないものになってしまう日が訪れるかもしれません。そうならない為に、地球人として私たち一人一人ができることは何でしょうか。小さなことかもしれませんが、世界で起きている事を他人事と思わないこと、日々考え行動で示すこと、そういった単純なことが私たちの未来を変える第一歩なのかもしれません。感謝の心を忘れずに。

父は仙台出身、母は青森出身。シャイで暗いが血はパンク、生粋の東北っ子です。四人兄姉の末っ子でのんびり野放しで育った為、幼少期はムチムチおデブちゃんの食いしん坊で、迷子で探すと大抵レストランのショーウィンドウにへばり付いていたそうです。
そのまま好き嫌いなくすくすく育ち、180cmまで伸びてしまいました。
大学まではクラシックピアノを専攻していましたが、長身を生かしモデルの世界へ。業界が合わず、25歳でモデルとしては珍しいフリーランスで活動開始。パリや東京、ソウル等のコレクションランウェイを歩き、ファッション界の一匹狼として今まで駆け抜けて来ました。
ご縁あり金沢の地に移住してまだ間もないですが、生まれ育った東北にも似た風景やきりっと澄んだ空気と水の流れるこの地から産まれる季節毎の新鮮な食や文化に触れ、携わってゆきたいです。

映画館、美術館、喫茶店、ネオンライトが好き。