2021.04.06

沖縄のあんまー食堂を訪ねよう

昔、琉球の東アジア交流史研究のために沖縄に住んでいたことは何かの記事で書いたかもしれない。

今から約10年余前の話である。

お金がなかったというのと趣味も兼ねて、那覇の松山という歓楽街でキャバクラの呼び込みをバイトでやっていたなあということを思い出す。

その頃には松山に閻魔というクラブがあって、野球部が氷水を入れているあのタンクに泡盛が入っていて、入場者はそれをがぶ飲みできるという豪気なシステムだった。

バイトを終えると安く飲めるのと、女の子と話したりするためにほぼ毎日このクラブに行ったなあ、ということを思い出す。

そして松山にある食堂「みかど」によく行ったものである。

当時のみかどという食堂は24時間営業なので、そんな変な時間でも空いていたのだ。
このあたりで「おすすめの定食屋ない?」と聞くと、大体が「みかど」か「三笠食堂」に人気を二分する。
どっち派があるというよりは、両方とも行くよね、というゆるーい雰囲気で愛されている地元食堂である。

沖縄でナイチャー(本州人)の私が度肝を抜かれた食べ物が2つある。

一つがカツ丼。
もう一つがちゃんぽんだ。

とりあえずこれをご覧いただこう。

これが沖縄カツ丼である。

おわかりいただけただろうか。。。

本州人には見慣れない具材が入っていることを。
具材はカツ、卵、玉ねぎ、にんじん、キャベツ、上にニラを散らしてある。

正直なところ、最初このカツ丼にお会いしたときは残り物の具材で作った賄いメシと勘違いした。気に入ってその後に注文するとき、「賄いカツ丼、あれ頂戴!」と言ってしまったことがある。

この野菜たっぷり具だくさん系カツ丼こそが、沖縄のスタンダードなのだ。

これも店によって色々バリエーションがあり、宜野湾の琉球大学にやや近めの「みどり屋食堂」ではもやし、にんじん、青菜、キャベツ、玉ねぎを野菜炒めしたものを卵で包んでご飯の上に乗せ、さらにその上にカツを乗せるという独立型スタイルになっている。

これ以降、沖縄の食堂のカツ丼バリエーションにハマってしまい、沖縄の訪れた先では必ずカツ丼を食べるという沖縄・カツ丼フリークになっている。
残念ながら東京でこの沖縄カツ丼を食べさせる店がない。私にとって沖縄の味は、ラフテーやゴーヤーチャンプルーよりも、カツ丼なのだ。

沖縄本島滞在中に色々食べ歩いた結果として、沖縄のカツ丼の源流は本州のカツ丼と全く別系統の伝来なのかもしれない、と思うようになった。

もともとはこのカツ丼と野菜炒めを白米の上にのせるという、みどり屋的独立スタイルが沖縄カツ丼の祖型で、あとから卵で包む一体化が始まったような気がしないでもない。

これは機会があったらもうちょっと調べて沖縄の出版社で密やかに本にしようかとも思っている。

そして自分内沖縄的ソウルフードとして欠かしてはならないものは「ちゃんぽん」だ。

沖縄ちゃんぽんは、ビールと非常に合う。

さて、沖縄ちゃんぽんだが、見た目はこちらである。
ドン!!!!!!!!!

ちゃんぽんというと、長崎のあの麺料理だと思うかもしれない。

しかし沖縄のちゃんぽんは、ご飯料理なのである。

キャベツ、細切りの人参、玉ねぎと春菊、スパム(もしかしたらコンビーフかもしれない)を卵で包んだもの。キャベツは歯応えをわざと残している。

断面はこんな。
完全にご飯ものである。

沖縄の食堂で「ちゃんぽん」を頼めばご飯モノが出てくる。

この写真は松山のみかどだが、同じ松山で人気を二分する「三笠食堂」でちゃんぽんを頼むと、ひき肉と刻んだ玉ねぎを卵とじにしたものが出てくる。
ちなみに沖縄の大衆食堂は、あんまー食堂なことが多い。

あんまー食堂はウチナーグチで、直訳すると「オバチャン食堂」とか「お母ちゃん食堂」ぐらいの意味である。プロ料理人ではなく、近所のおばちゃんが厨房から給仕まで切り盛りするお店だ。

こういう働き方を本州でももっと推奨すればいいのに、と思う。

なんというか、和むのである。

一つの料理でもその概念に縛られずに独自バリエーションを展開していく沖縄の大衆食堂は、コロナ終息後にはぜひ訪れてほしい多様性の宝庫なのである。

お食事処みかど
住所:〒900-0032 沖縄県那覇市松山1丁目3−18
電話:098-868-7082

お食事処 三笠 松山店
住所:〒900-0032 沖縄県那覇市松山1丁目12−20
電話:098-868-7469
公式サイト: http://www9.plala.or.jp/mikasa1/

私は、だいたい数日に一食しか食べない。一ヶ月に一食のときもある。宗教上の理由でも、ストイックなポリシーでもなく、ただなんとなく食べたい時に食べるとこのサイクルになってしまう。だから私は食に対して真剣である。久々の一食を「適当」に食べてなるものか。久々の食事が卵かけ御飯だとしよう。先に白身と醤油とを御飯にしっかりまぜて、御飯をふかふかにしてから器によそって、上に黄身を落とす。このときに醤油がちょっと強いかなというぐらいの加減がちょうどいい。醤油の味わい、黄身のコク、御飯の甘さ。複雑にして鮮烈な味わいの粒子群は、腹を空かせた者の頭上に降りそそがれる神からの贈物である。自然と口から出るのは、「ありがたい」の一言。