2021.02.02

おきなわが食べてきたもの【私の食のオススメ本】

  • 書名:おきなわが食べてきたもの
  • 著者:文・上里隆史 絵・ぎすじみち
  • 発行所:ボーダーインク
  • 発行年:2019年

この本には小学生が読めるようにすべての漢字にルビがふってある。もしかして、ひらが読める外国の人のためかもしれない。

この本は「沖縄が食べてきたもの」から沖縄の歴史を見るという内容だ。著者の上里隆史氏は琉球史研究家で「古琉球とアジアの交流史」を専門とする。
沖縄は海の向こうから伝わってきた新しい文化や食材を取り入れながら独自の食文化を築いてきた。

沖縄の島々はサンゴのたくさんある浅瀬の海、ラグーン(沖縄ではイノーという)に囲まれていて、1000年ほど前までここに群がる魚や貝を食べていた。

農業が始まり、2期作が繁栄をもたらす。宗との交易が始まった日本から中国へ送るヤコウガイなど求めてやってくる。台風に強い南アフリカ原産の芋は沖縄になかった。中国を回って400年ほど前にやってきて沖縄中にカライモとして広まった。

芋を広めた「儀間真常」はサトウキビも持ってきた。中国にスタッフを送り、技術を学びサトウキビを絞る歯車も持ち込み、一大産業となる。琉球王即位の時の中国の使者が豚を持ち込む。昆布は沖縄の漢方を求める富山の薬売りが持ってきた。

第二次世界大戦後はアメリカ軍を通して、米国の食品が入ってくる。ポーク缶(ポークランチョンミート)がポーク卵ポークおにぎりなどとして食卓に並ぶようになる。

30ページ程度のの絵本のような本に、海外との交易、交流、移民などによる壮大なドラマがある。

家族と沖縄を旅するなら、子供にはこの本を読ませてからにすべきだ。大人もだが。

WRITER Joji Itaya

出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。