ふだんはツンツンとつれないくせに、ふとした瞬間にデレっとして甘えてくる、そうツンデレ。長年、僕を花粉症で悩ませてきた杉に対して、最近はそんなイメージを持つようになりました。
みなさんがよくご存知のヒノキ科スギ亜科スギ属の「杉」は、日本原産の樹木で国内で最も多い植林面積をほこり、建材に使われることからも昔から日本人に馴染みのある樹木です。
でも、この杉の枝葉から柑橘系の爽やか香りがするって、ご存知でしたか?
精油(エッセンシャルオイル)に知見や興味がある人にとってはポピュラーな植物性香料ですよね。まだフレッシュな葉をちぎって、手のひらでパンッとたたくとふわっと漂う芳香は、柑橘系の香り。これは、リモネンという柑橘類の果皮などにも含まれる精油成分由来のもの。さらに抗菌、防虫、抗ストレス、消化促進などなど様々な作用があるそうです。
(※実際に精油を使用する時は、それぞれの精油に禁忌があるので必ず専門家に相談してください)
さて、ここで杉の香りから日本の抱える林業や里山の保全の課題などいろいろと話題は広がるのですが、これはまた別の機会に。
杉の学名は「クリプトメリア ジャポニカ(Cryptomeria japonica)」で、「隠れた日本の財産」という意味だそう。ちょっとなんだかロマンチックじゃないですか。山々を美しい緑で彩り、実は心地よい香りも放つ杉。お酒の蒸留を生業にする僕にとって大切な植物になりました。杉に限らず松、ヒバ、クロモジなど、日本の山は本当に香りの宝庫。どんな風なスピリッツ(蒸留酒)、ノンアルコールスピリッツに料理するか楽しみで仕方ありません。
もう少しして山が雪解けを迎えたら、花粉症はあれど腹をくくって山へ、杉の葉や枝を恵んでもらいに行ってきます。
Alembic蒸留所通信Vol.1『赤い扉のお話』はコチラから
お腹がすいたから食べる、カラダによいから食べる、生きるために食べる。いろんな食べるがありますよね。なかでも、僕は大切な人と一緒に美味しいを分かち合って食べる時間が好きです。「いただきます」から始まって、「ごちそうさま」で終わる時間。食卓を囲んで、お腹も気持ちもいっぱいになって、「あぁ、今日も良い一日だったな」と思えるこのシアワセな時間を、より多くの人が過ごしてもらえるように農業、食を楽しむ場の提供、そして醸造の仕事を通して伝えて行きたいと思います。