- 書名:おにぎりをつくる
- 著者:高山なおみ
- 写真:長野陽一
- 発行所:ブロンズ新社
- 発行年:2020年 初版 2021年6刷
高山なおみ、といえば吉祥寺の『諸国空想料理店 kuukuu』だ。彼女はそこのシェフというか料理人だった。その名の通り、世界の料理に思いを馳せ、想像をし、おいしければ現地と違ったってかまわないと料理を提供してきた。多国籍料理という看板の店が少しづつ表に出てきた時代だ。
高山なおみ氏が抜けた後もその店は続き、2003年に閉店となった。料理家として人気になった彼女はいくつもの料理本やエッセイを出版した。
2014年に『料理=高山なおみ』を出版した高山なおみ氏はSoup Stock Tokyoのオウンドメディアで「今後やりたいことは?」というインタビューにこう答えていた。
「どこか外国の家にホームステイして、その家のおばあさんや奥さんから料理を教わってみたいです。」
しかし彼女は翌年、絵本の制作のために神戸に移り住むことになる。料理の仕事はストップした。そして、本書『おにぎりをつくる』のほかに『どもるどだっく(絵・中野真典)』『それからそれから』『みどりのあらし』『ふたごのかがみピカルとヒカラ(絵・つよしゆうこ)』(あかね書房)などを発表している。
本書『おにぎりをつくる』は、おとなとこどもが、お米からご飯を炊いておにぎりをつくる工程を写真で絵本にしたものだ。
彼女は本書に『子どもたちが、自分ひとりでもできるようにと思って、この絵本を作りました。おかあさんもおとうさんも 外で働いていて、家にだれもいないとき。はらぺこのおなかには、おにぎりは「いのち玉」です。じぶんでつくれたら、おかあさんやおとうさんにつくってあげることだってできますよ。』とメッセージを書いている。
彼女はなぜいま<おにぎり>だったのか。
自分は、このおにぎりが<塩にぎり>であることがなぜかうれしかった。海苔も具材もない。最後のページに「おみそを つけても おいしいよ」とある。
そう、いのち玉、なのだ。この絵本は、人は生きられるということを伝えているのではないか。
出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。