2022.04.06

想い出の朝ご飯*トック 〜オカンの韓国家庭料理 Vol.12〜

韓国料理トックのスープ

「一日の計は朝にあり」

この言葉があるように、良い一日を計画的にスタートさせるためには、朝食はとても大切な存在だと個人的に思っている。大人になった今、目覚めのコーヒーで済ませてしまう事も多いが、時間があればしっかりと準備をし、ゆっくりと食事をしたいのが本心である。

私の母は、夜に小料理屋さんを営んでいたため、就寝するのは普通の人よりも遅かったが、私が小学校を卒業するまでは朝早く起きて、しっかりと朝食を準備してくれていた。
そんな私の想い出深い朝食の中でも、いっそう思い入れのある味が『トック』である。

韓国食材トック

聞き慣れない方も多いと思うが、トックは韓国ではポピュラーな食材で、穀物、特にお米で出来たお餅を指す。地域の特色により様々な製法・種類が存在するが、日本で手に入る形状は、写真のように薄くカットされており、スプーンに丁度良い大きさだ。保存も効くので、母はこれを大量にストックしていた。

食べ方はと言うと、市販の顆粒出汁に醤油ベースで薄く味付けをして、卵と薬味でシンプルかつボリューミーなスープとして食べていた。わかめスープの具材としても使っていたと思う。

私の出身地である山陰は白ねぎが有名で、実家の裏にもねぎ畑が広がり、鶏卵農家とお付き合いのある母が産みたて卵を定期的にゲットしていたので、材料には事欠かない。
特に寒い時期は、週に一度は朝食としての定番メニューで、朝から炬燵に入りながら姉と一緒に舌鼓を打っていたものである。

韓国料理トックのスープ

この前、トックスープをふと思い出して、姉に「そう言えば、あのトックのスープ良く朝食で出て来たよね〜。」と、話したら姉は『朝の短い身支度の中で、しっかり栄養摂らせたかったんじゃないかな!?母の愛情だよ〜❤︎。』と、返され、妙に納得したものだ。

今後も母の味をこの様に想い出しては作ってみたいと感慨に浸り、母のレシピをしっかりと受け継ぎたいな!という気持ちが強くなった、とある日の朝ご飯でした。

WRITER Taishi Joh

沖縄にルーツを持つ父親と、韓国人の母との間に産まれ、幼い頃から日本食とは一風変わった食卓で育ちました。
転勤族の父親に付いて、全国津々浦々に移り住み、グルメな母親の影響で週に一度は外食をしていました。
それでもやはり、一番好きな食事は母親の手作りです。母も小まめに料理を作り、夕飯の家族一緒の団欒はかけがえのない想い出です。
今でも月に一度の頻度で、田舎の特産品や母親手作りの常備菜が届きます。
そんな私が、もう永住するしかないと決めた大好きな街、金沢。
其処から全国、ひいては全世界に向けて食のあり方を発信することが出来る私たちの会社を誇りに思い、末端ながらお仕事出来る喜び…と、美味しい賄いを噛み締めている毎日です。