自分の人生の最後の晩餐は何か?皆、一度は考えたり聴かれたりした事があるだろう。
私の答えは、母の手作りの「ポテトサラダ」だ。
先達て、母の料理好きは書かせて頂いたが、和洋中と何でも作れるし、何を作っても失敗がなく、どれを食べても美味しい。
そして彼女の凄いところは、料理を作る手早さと量の多さだ。
母の作る料理は何でも好きだが、中でも子供の頃からイベントに必ず用意してもらうのは『ポテトサラダ』だ。
大人になり、自分でも作るようになったポテトサラダは、実は行程が面倒だ。ジャガイモを茹でるのはコンロだが、熱々のジャガイモの皮を剥くのはなかなかの至難の業だ。熱々でなければ綺麗に剥けず、剥いてから茹でると味が落ちる。
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僕は見ての通りの大食漢なので、母は僕のリクエストでポテトサラダを作るとなると、拳サイズのジャガイモを20個から30個湯掻く。
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軍手とビニール手袋を駆使して、母は熱々のジャガイモを剥く。
ジャガイモが冷めたら、それに見合ったゆで卵、ハム、玉ねぎ、きゅうりも下拵えして混ぜる。
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ゆで卵は潰し過ぎず、ハムは角切りが良い。玉ねぎは水に晒して辛味を取る。きゅうりは少し多めの塩で、キュッと手絞り。
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その量はもうボウルでは追いつかない。
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母はバケツで混ぜる。マヨネーズは業務用を使う。それでもあっという間に無くなる。
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熱々剥きからの力仕事で、母はバケツでポテトサラダを作る。
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力尽きた母は、僕にバケツごと手渡す。
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そして僕は瞬殺で食らう。
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母の精魂込めた愛情たっぷりのポテトサラダと真剣勝負の場だ。お米やその他のおかずには見向きもしない。
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母がバケツで作るポテトサラダより美味いポテトサラダに、僕はまだ出会ったことが無い。
沖縄にルーツを持つ父親と、韓国人の母との間に産まれ、幼い頃から日本食とは一風変わった食卓で育ちました。
転勤族の父親に付いて、全国津々浦々に移り住み、グルメな母親の影響で週に一度は外食をしていました。
それでもやはり、一番好きな食事は母親の手作りです。母も小まめに料理を作り、夕飯の家族一緒の団欒はかけがえのない想い出です。
今でも月に一度の頻度で、田舎の特産品や母親手作りの常備菜が届きます。
そんな私が、もう永住するしかないと決めた大好きな街、金沢。
其処から全国、ひいては全世界に向けて食のあり方を発信することが出来る私たちの会社を誇りに思い、末端ながらお仕事出来る喜び…と、美味しい賄いを噛み締めている毎日です。