- 書名:酒肴酒
- 著者: 吉田健一
- 発行所:光文社文庫
- 発行年:初版2006年
本書は1974年に刊行された書籍が1985年に初文庫化された「酒肴酒」と「続・酒肴酒」をまとめ、新たに再編集されている。
タイトルは「さけ さかな さけ」と読む。このリズムが著者の食と酒に対する気持ちを言い表しているように思う。
吉田健一は金沢に馴染みが深く、1973年には昭和20年代から40年代の20年間の体験をもとに、小説「金澤」という本を出し、この街にはどれだけ和風なものしかないか、と主人公に言わせている。
そして発祥から400年になる老舗酒蔵福光屋の銘酒「黒帯」の名付け親でもある。有段者の酒という意味とのこと。
主観であるけれど、吉田の「怪奇な話」は人間とは違う異人との距離感を書いているようで、海外体験ではなく、金沢の体験が影響しているのではないかと思う。
その、吉田健一は幼少期に外交官であった父親・吉田茂についてイギリス、フランス、中国で育ち、ケンブリッジ大学に学び、海軍に入る。
よって、洋行の船で初めて食べた西洋料理から闇市の定食、ピカデリー・サーカスの裏通りのパブ、昔ながらの大阪のおでん屋まで、話は広い。
日本酒はもとより、洋酒については、葡萄酒、白葡萄酒、コニャック、シャンパン、ウイスキー、キルシュワッサーについてそれぞれ短いながらも深い経験から想いを書き綴っている。
出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。