2022.09.13

世界のおつまみレシピ【私の食のオススメ本】

世界のおつまみレシピ 表紙

  • 書名:世界のおつまみレシピ
  • 編集:本山尚義
  • 発行所:主婦と生活社
  • 発行年:2019年

本は想像力で読み、想像力を育てる。レシピ本をめくるのは楽しい。かつ外国の知らない食べ物のこととなると自分にとってこの上もない好物なのである。さらに身近な食材でできる“おつまみ”となると、調理のハードルがぐぐっと下がるので読むだけでも想像力で実物を食す一歩手前までいける。

著者、本山尚義はフランス料理を習得後、ヨーロッパ、オセアニア、アメリカ、アフリカ、アジアと世界30カ国を旅しながら現地の料理を覚えたシェフだ。“おつまみ”と謳っているので当然相方は「酒」だ。こんな本があると確かに家飲み率が上がるかもしれない。

ピピシュ(レバーのピリ辛煮)、スタムポット(じゃがいもとにんじんのサラダ)、パンネンクーケン(厚焼きクレープ)、アイタルシチュー(豆と野菜のシチュー)、チレ レジェーノ(ピーマンの詰め物焼き)、パステル(揚げ春巻き)、ボボティ(カレー味ミートローフ)、ザルーク(ナスとトマトの前菜)・・普段聞きなれない言語のメニューは特に面白い。しかし特別なものはない。地域の日常食だ。肉じゃがみたいなもの。

耳慣れない料理の味を想像する

もちろん、フィッシュ&チップス、ポキ、キューバサンド、ガドガドなどの日本でも知られている料理もたくさんあって、その作り方を読み直すと「そうやって作るのか」と発見もあって楽しい。

本書の優秀なのは逆引きできるインデックスが後ろについていること。「国別に探す」「スパイス・調味料から探す」「素材別に探す」とあるので冷蔵庫などに1回使って残っている外国の調味料で何ができるか、アフリカの辛いのが食べたいとか、考えられるので便利だ。

後書きで著者が世界の料理の紹介する目的を書いているが、世界196カ国、約76億人の人間が多種多様な料理を食べているわけで、その料理に触れることは人や国の相互の「理解」を深めることになり、今起きている問題の解決の入り口に立てるのではないだろうか。

特に日本人の舌には食の国境というものがない。他国ではありえないほど世界中の料理を食べる。この特技?を未来のために生かさない手はない。

WRITER Joji Itaya

出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。