今や1児の母となった私は、夜な夜な飲みに行く事はできなくなったが独身時代には、それはそれは毎日一緒に飲み、笑いあった親友がいる。
彼女は見た目は可憐で美しい美女なのだが、中身は男前。中身に小さなオッサンを住まわせている私とは本当に馬が合う。夜な夜な飲んでいるのに、彼女との話は尽きず、ついつい飲みすぎて時間を忘れることも。
ある日のカウンターにて、バーのマスターがそんな私たちに締めのお酒として「ニコラシカ」を勧めてくれた。
その「ニコラシカ」なる飲み物は、ブランデーを使ったカクテル。カクテルといっても、ブランデーの入ったショットグラスにレモンの輪切りが乗り、さらにそのレモンにお砂糖が小さなお山のように乗っている。そして、その砂糖乗せレモンを口にほおばり、すかさずブランデーを一気に口へ。そう、お口の中でカクテルになる。そんな飲み物だった。
けっこう飲んでいる状態で40度はあろうかというブランデーを一気飲みするという飲み方は、心地よい睡眠か、はたまたふらふら歩きの酔っぱらいになるかを選ぶロシアンルーレットのようにも感じた。
長居すると歩けなくなるかも!と私たちはそのお酒を注文すると同時にタクシーを呼んでもらった。レモンをモグモグ、ブランデーをぐびり。
ん?美味しい!やばい!美味しい!でも、危険な香りもするからおかわりはしない(笑)
なんだか、やり遂げた余韻に浸っていると、ちょうどいい感じでタクシーも到着する。その後、私たちの間でしばらくこの飲み物が流行った事は言うまでもないが、何よりいつまでも話していたいが「そろそろ帰ろっか」という、なんだかちょっぴりさみしくなるような、最後の言葉を言う代わりに使える呪文ができたことが嬉しかった。
「ね、ニコラシカ飲もっか」を思い出したら、また時間を忘れて飲みたくなった。早速彼女に連絡をしよう。
text:Ryoko Takakuwa
(本稿はOPENSAUCE元メンバー在籍中の投稿記事です)
撮影協力:金沢・片町「Starlit KITCHEN & BAR」