2021.01.30

池波正太郎 むかしの味【私の食のオススメ本】

  • 書名:むかしの味
  • 著者:池波正太郎
  • 発行所:新潮社
  • 発行年:初版1988年 2020年48刷

銀座・たいめいけんのポークソテーとカレーライス。銀座・新富寿しの鮨。神田・まつやの蕎麦。神田・竹むらの栗ぜんざい。銀座・煉瓦亭のポークカツレツ。品川・若出雲の仕出し料理。銀座・清月堂ライクスのクリームソーダとアイスコーヒー。京都・松鮨。京都・イノダコーヒー村上開新堂の洋菓子。浅草・前川の鰻。上田・刀屋の信州蕎麦。松本・竹乃屋の中華料理。銀座・資生堂パーラーのチキンライスとミートコロッケ。横浜の酒場・スペリオパリ。京都・蛸長、かざりやのおでんとあぶり餅など。大阪・ABC大黒のビーフカツレツとかやく御飯など。横浜・清風楼蓬莱閣の焼売、餃子、中華蕎麦など。京都・フルヤのパルメ・スイーツとチキン・チャプスイ。神田・万惣のホットケーキとフルーツ。京都・初音と盛京亭の饂飩と日本風中華。フランスの田舎のホテルの牛乳、卵、野菜、パンなど。

神田まつやのカレー南蛮
とろろ蕎麦はそばの香りを消すのでもっての外、と言っていたらしい池波も「有名店ではカレーを出さないものだが、まつやのカレー南蛮はうまい」と言っていた神田まつやのカレー南蛮

総発行部数は何部なのだろうか。いまだに増刷され続けている。

池波正太郎は「この本はいわゆる食べ歩きの本ではない。私の過去の生活と思い出が結びついている食べものや店のことを語ったものだから、この本を食べもの案内のようになさると、責任はもてない。」と書いている。

この本は昭和56年1月から2年間、小説新潮に連載された。文庫化された6年後に、池波は「私は、なつかしく、この一冊を読み返した」と語っている。そのころを思い出してゆたかな時間が戻ったのだろう。

“私の過去と生活”とは、そのころあった心のゆたかさとの出会いのことだと思う。それは食べ歩きではなく、池波の文章を旅することでわかる。増刷され続ける理由は読んでみればわかる、としか言えない。

池波の挿絵も秀逸であることを付け加えておく。

WRITER Joji Itaya

出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。