2026.04.13

梁宝 璋「味坊の味」【私の食のオススメ本】

  • 書名:「味坊の味」リョウさんが伝えたい中国の家庭料理
  • 著者:梁宝璋(味坊集団)レシピ監修:今井真実
  • 発行所:左右社
  • 発行年:2025

2019年の年末、梁宝璋さんを訪ねて東京御徒町の『老酒舗』に伺ったことがある。(取材記事:『越境した中国チチハルの味。 母子の味が伝えるもの。』

ちょうど足立区一ツ家にセントラルキッチン(現・味坊美味厨房)を作っているので見に来て欲しいということで、インタビューを途中にし、現地に向かった。セントラルキッチンの目的の一つに仔豚や仔羊の丸焼きができる焼き場を設けることがあった。

当時、5つになった店舗にはこの焼き場を設けることはできない。どうしてもお客さんに仔羊の丸焼きを味わって欲しいということだった。(梁宝璋さんの店は現在12店舗。それぞれ違ったスタイルの中国料理を楽しめる)

取材時はまだ丸焼きは食べられなかったが、梁宝璋さんのところの羊肉料理は絶品だった。人によっては茶色くてインスタ映えはしないと思われるかもしれないのだが、ああ、これが家でたべられたらなあ、と思ってしまった。だって、これは「家庭料理」なのだから・・・・・・・

うれしいことに、その羊肉料理のレシピも掲載されたレシピ本が発売された。さらにありがたいことに、ほとんどのレシピがフライパン一つと一口コンロで完成できる。

これにはレシピ監修の今井真実さんの力も大きい。まず、大量につくることの多い中国料理の調味料の分量を少人数分に変換するというのはかない難しい。特に梁宝璋さんの仕込みは丁寧だ。家庭での仕込み調味料の分量などはさらに大変だったろう。

さすが、山田詠美さんとの共著『Amy’s Kitchen 山田詠美文学のレシピ』などで山田詠美作品に登場する料理の数々を再現したり、フライパンと包丁と熱源があればどこでも料理ができるという『フライパンファンタジア』というレシピ本も出している今井真実さんである。

レシピの構成は、野菜畑まで作って育てている<野菜>の料理。そしてメインの羊肉。豚肉、魚料理の<主役>。そして麺や炒飯、焼売・餃子などの<満腹>。全部で58のレシピが並ぶ。

<主役>の章では、「ラム肉と長ネギ炒め」「羊肉の米粉蒸し」「ラム肉のクミン炒め」「骨付き塩茹でラム」「しゃぶしゃぶ羊肉の四川風」などの羊肉料理が12、3品並び、モンゴルに自転車で行ったという中国東北地方出身の梁宝璋さんのこだわり「発酵白菜」を使った豚バラの煮込み、や魚料理。

<野菜>は「青唐辛子とパクチーときゅうりのサラダ」「じゃがいもの冷菜」「黒酢ピーナッツ」「野菜の干し豆腐手巻き」「干し豆腐の冷菜」などから「きゅうりの大葉炒め」「じゃがいもクミン」「米汁の野菜煮込み」など簡単で酒のつまみにもなる品が続く。

さらに<満腹>とした章では、「具なし焼きそば」「トマトとラムの焼きそば」「ラム炒飯」「ラム焼売」「ラムセロリ焼き餃子」とラムをつかった粉物が並ぶ。

なかでも以前の取材で梁宝璋さんから「餃子は季節の料理であり、それぞれの家庭の味」と聞いていたので、レシピに「四種の水餃子」があったのはうれしい。
「豚肉と発酵白菜の水餃子」「揚げ豆腐としいたけと小松菜の水餃子」「ラムトマト水餃子」「牛肉と大根の水餃子」は家の定番にしたいと思っている。

できれば、お店で食べてからこの本を入手して家で作る、というのがベスト。いくつかのお店は、梁宝璋さんが子供のころに中国チチハルにあった店の雰囲気の内装になっている。

2025年の年末に出版された本書を手にして最初に考えたのは、羊肉の入手だった。国産の羊肉生産量は年間140トン。国外に頼るしかない。やはり冷凍だが高品質なオーストラリア、ニュージーランド産が国産豚肉程度の価格で手に入るCostocoか?

ただ、中国東北地方でもラム肉は高級となっていて、特別な日に買うらしい。普段は豚肉を使っていると取材時に伺った。

個人的にはラム肉がもっと日常的に使われて欲しいと思うのだが。

WRITER Joji Itaya

出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。