Intro : ミルガイ / Interlude:フムス - 前菜2皿 –
Pairing Drink:花咲の翁
焦点:開花
前菜2皿に合わせ、全く味わいの異なるものが2層で1杯のドリンクになっている。
下の液体は貝の旨みに合わせブレンドしたハーブティー。上にはお花のエキスの泡。
フムスが一枚のお皿で大地(土)、蔓(茎)、蕾/花を表現しているため、その繋がりでドリンクは開花をイメージ。グラスを傾けると先にハーブテーが流れてきて、緑や葉を感じられる。後半にはお花のエスプーマと混ざった状態になり、時間経過による”開花”を表現した。
ハーブティー ※約8杯分
- セージ(フレッシュ)×3g
- レモンバーム(フレッシュ)×6g
- バイマックル(フレッシュ)×0.2g
- お湯×250ml
エスプーマ ※約4杯分
- お湯×100ml
- 1883 ローズシロップ×15ml
- 板ゼラチン×1/2
ハーブを手で軽く潰し2min30sec抽出し氷水に浸け急冷。
お湯にバラシロップを混ぜ、板ゼラチンを溶かし急冷。エスプーマボトルに入れ亜酸化窒素を墳入。
グラスにハーブウォーター30ml注ぎ、エスプーマを乗せ、エディブルフラワーを浮かせる。
Verse:八寸
Pairing Drink:プラム フェルメント
焦点:酸と甘み
春を感じる和の八寸に、ドリンクでも春を感じる梅をルイボスティーで発酵(フェルメント)させた自家製KOMBCHAをペアリング
発酵からくる適度な酸味と甘み、ルイボスの木漏れ日のような丸みと梅の香り。
暖かくなって庭園を散策し、日差しと香りで春を感じる熟年夫婦のデートをイメージ。いくつになってもお洒落な貴婦人のワンポイントとしてレモンピールを飾る。
- プレミックスKombcha × 25ml
- FEVER TREE premium soda × 40ml
- レモンピール
プレミックスKombcha
- 自家製 青リンゴ/ルイボスコンブチャ×500ml
- 星子シロップ× 3.5 tsp
カクテルグラスに常温に晒したカットアイスを入れ、プレミックスコンブチャを注ぎソーダアップ、グラスのフチにレモンピールを飾る。
Bridge:はた
Pairing Drink:ボトムパンプ
焦点:海底
白身魚と道明寺や桜の葉に和風だしといった、繊細だがしっかりと出汁のうま味や塩味のある魚料理。料理長からもスッキリさせるようなドリンクが欲しいと要望があり、ノンアルコールジントニックを合わせたが、トニックの厚みが繊細な料理の邪魔をしてしまうので、ソーダ比率の高いソニックにした。
魚と相性の良いジュニパーやミョウガ、柚子などを自家蒸留したノンアルコールスピリッツをソニック(ソーダ+トニック)でアップ。グラスの底にはバタフライピーをアガーで凝固し、海藻に見たてたローズマリーをさす。炭酸の泡が海の気泡のようで、はたの生息する海の底をイメージした、まさにグラスアクアリウム。
ボトムパンプとはルアーフィッシングにおけるメソッドで、海底を跳ねるエビなどの動きを模したアクション。お皿に箸をつける前に、魚に食べられる側の小さなエビやプランクトンの目線で海底を眺めていただき、自然界の連鎖を感じていただきたい。
海底部分(4杯分)
- バタフライピー × 3g
- お湯 × 300ml
- アガーパウダー × 液量の3%
- グラニュー糖 × アガーの1/3
- ローズマリー(カット)
海水部分
- 自家蒸留ノンアルコールジン/Japanese citrus flavor : 30ml
- FEVER TREE premium soda : 30ml
- FEVER TREE premium tonic water : 10ml
バタフライピーを2min抽出。鍋で軽く沸騰させ、アガーとグラニュー糖を混ぜ合わせ粒子を結合させたパウダーを数回にわけ混ぜ入れる。泡をスプーンで除去しタンブラーに注ぎ、粗熱を取り固める。
固まったゼリーの中心にカクテルピンで穴を開け、カットしたローズマリーを挿す。
自家製ノンアルジンをゆっくり注ぎソーダとトニックを加える。
Chorus:別海和牛ひれ
Pairing Drink:マッシュポテト
焦点:ガルニチュール
肉のうま味やパンチの効いた行者ニンニクなど、さまざまな要素のある一皿だが、個人的には葉ワサビが印象的。西洋ワサビのつーんと鼻に抜ける刺激とは異なり、柔らかいがしっかりワサビの香りがする。そんなワサビの柔らかい印象の添え物の他に、自分が料理人でもう一品何か添えるとすれば…優しい味付けのマッシュポテトかな。ということで、マッシュポテトをドリンクで表現する。
カリフラワーから抽出した優しい野菜だしを味のベースにジャガイモもマッシュし、クミンなどのスパイスを加え、しっかりと濾してさらりとしたテクスチャーに。
エシャロットの濃縮エキスをアクセントに数滴加え、お肉やニンニクに負けないパンチ力をチラッと覗かせる。途中で粒マスタードを噛んでもらうと、よりジャガイモやスパイスの香りが引き立つ変化も楽しめる。
ポテト部 ※約20杯分
- カリフラワー × 1ヶ(茎と花蕾に分ける)
- 水 × 1000ml
- 塩 × 2つまみ
- ジャガイモ × 2ヶ
- クミン(ホール)× 1tsp
- ケッパー × 4粒(潰す)
アクセント
- エシャロット濃縮エキス × 3drop ※エシャロット×3ヶで約20杯分
- タスマニアマスタード 適量
カリフラワーの茎と水を鍋に入れ塩を振る。水から沸かし沸騰後取り出す。カリフラワーの花蕾を入れあくをとりながら弱火で10min茹でて取り出す。
サイの目にカットしたジャガイモを入れ弱火で10min茹で、先に取り出しておいたカリフラワーの花蕾の1/2程を加えハンドブレンダーでマッシュ。(分量は素材の味をみて調節)
クミン、潰したケッパーを加え弱火で5min煮てストレーナーで濾して、40ml×必要はい数分に小分けに真空パック。
ざく切りにしたエシャロットを炒め真空パック。低温真空加熱し濃縮エキスを取り出す。
真空パックのまま65℃のお湯で真空湯煎したポテト40ml注ぎ、エシャロットエキスを3drop落とす。豆皿に少量のタスマニアマスタードを添える。※風味が飛ぶので沸騰したお湯で湯煎しないように。
Solo:穴子寿司
Pairing Drink:トマトのmiso汁
焦点:膳
ご飯ものに、バーマンが作る”ドリンクとしてのみそ汁”を合わせ膳を完成させる。
甘口赤ワインを使ったアナゴのタレに合わせ、トマトから取った酸味と旨みのある出汁に炙った白味噌を溶かし込む。スープでもなくお吸い物でもない。あくまで”ドリンク”としてのみそ汁を表現。
- クラリファイド トマトリキッド × 30ml
- 炙り京白味噌 × 1g
トマトをざく切りにし真空ブレンダーでピューレにし、塩を混ぜバランスを取る。
ペーパーで一晩濾して、30ml×必要杯数分に真空パックで小分けする。
パックのまま75℃~80℃のお湯で真空湯煎したトマトリキッド30mlに、バーナーで炙った白味噌1gを溶かし入れ、ストレーナーで濾して、温めたESPカップに注ぐ。
※クラリファイドトマトリキッドはうまく濾ぜずあまりクリアにならなくても、真空湯煎で温めるとトマトの赤い繊維質が凝固するのでストレーナーで濾せばクリアになる。味噌汁なので熱い状態で提供したいが、高温で湯煎すると風味が飛ぶので注意。
Outro:Meli Mató / パパイヤ Thai
Pairing Drink:アップルパイ
焦点:再構築
デザート2皿の材料/要素を分解し、個別に合う食材や香りを選び、選んだものを組み直すと、行き着く先がアップルパイだった。チーズや蜂蜜、燻製の香りに火の入ったとろとろのリンゴ。
苦味や爽快感のあるフルーツやアクセントのハーブには、シナモンやクローブ、隠し味に優しく抽出したタラゴンのフレーバーを。全てを繋ぎ合わせ温かいリンゴのドリンクにし、ガーニッシュとしてサクサクに焼いたクッキーを添える。ドリンクとクッキーを交互に口にすれば、アフターの味わいと香りはまさにアップルパイ。
- スパイスアップルジュース × 40ml
- クッキーガーニッシュ × 1枚
スパイスアップル ※約10杯分
- 水 × 500ml
- リンゴ × 2ヶ(実と皮に分ける)
- フレッシュレモン × 1/2
- シナモンスティック × 2
- クローブ × 2片
- フレンチタラゴン × 3g
鍋に水を入れ、レモン1/2を絞り(変色防止)りんごの皮を入れ、水から沸かしペクチンと皮の香りを抽出。沸騰後、皮を取り出しりんごの実をすりおろし入れ5min弱火で煮詰める。
シナモンスティックとクローブを加え、蓋をしてさらに弱火で5min加熱。火を止めフレンチタラゴンを入れ蓋をして5min蒸らす。ストレーナーで濾して40ml×必要杯数分で真空パックに小分けする。
クッキー生地
- 卵白 × 50g
- 粉糖 × 50g
- バター × 50g
- 薄力粉 × 60g
卵白、粉糖をホイッパーで混ぜ、バター50gを混ぜ合わせる(分離しないように数回に分けて)。薄力粉60gを数回に分け振るい入れさらに混ぜる。
丸穴の型(自作No.4 – 10φ)に生地を薄く伸ばし160℃のオーブンで10min焼く(風弱)
焼き上がったらすかさず巻いて形成する。
パックのまま65℃のお湯で真空湯煎したリンゴジュース40mlをグラスに注ぎ、ガーニッシュのクッキーを飾る。
Digestif:Pear flavor tea
今回のコースは食後のお飲み物もいつもとは違うものを用意。
Outro:パパイヤ Thai のグレープフルーツの余韻が残る状態では苦味の強いコーヒーはあまり相性が良くない。そこで、洋梨の柔らかな甘みとジャスミンのタンニンを使い、タイやアジアのイメージを引き継ぎつつ優しく包み込みながらすーっと引いていく。
アウトロのSEのフェーダーをスネークアウトするように。PAエンジアでもある僕なりの演出。
フレーバーティー ※約3杯分
- ドライペア × 15g
- ジャスミン × 7g
- お湯 × 400ml
ドライペアを細くちぎり、ジャスミンと一緒に2min抽出。ティーポットの中でしっかりステアしペアの甘みと風味を溶け込ませ、耐熱グラスに120ml注ぐ。
元音響エンジニアのバーマン。
外食はコンサートと同じ。料理やドリンク、空間やサービスで楽しいショーを体験する時間。ステージを彩るドリンクで、ショーの一翼を担う。