2021.11.09

A_RESTAURANTノンアルコールペアリング 2021年9月-10月

金沢・片町のA_RESTAURANTでは、コースの料理のそれぞれに、ノンアルコールドリンクのペアリングをご提供しております。

バーマンによる独創的な発想から生み出されるA_RESTAURANTのノンアルコールペアリング。
本記事では、固定概念にとらわれず、他では類をみないドリンクたちのペアリング要素やレシピ、発想や思考の一部を解説いたします。

今回は、2021年9月-10月のA_RESTAURANTコースメニューと、ペアリングドリンクのレシピをご紹介します。


Intro : 重楊 ( September )  / いくら ( October )

Pairing Drink : 凝縮マスカット

焦点 : 凝縮したフルーティー感

菊の節句とも言われる重陽をテーマとした典型的な和食(実は初めて知った…節句を料理で表現し時の流れを大切にする日本料理は本当に日本人らしい)には、今年の僕のシグネチャー的ドリンクであるマスカットと洋梨を発酵させたコンブチャを合わせた。

クラッシュアイスの量やコンブチャとソーダのバランス次第で幅広い料理に合わせることができるこのドリンクは万能で、今回は淡く繊細な味わいの和食に合わせクラッシュアイスの量を多めに調整し液量を減らし淡い味わいに。かといって決して味気ない感じにならないのはやはり発酵からくる厚みを持っているから。

薄めにミックスしても、ベースは凝縮させたフルーティー感がしっかりとある。

凝縮マスカット

  • 自家製コンブチャ  20ml … ※
  • FEVER TREE premium soda  適量
  • クラッシュアイス  適量
  • レモンピール <garnish>
  • ライムピール <garnish>

※自家製コンブチャ(約30杯分)

  • ココファーム / マスカットジュース  900ml
  • MLESNA TEA HOUSE / LA・FRANCE  2TB
  • フレッシュ ライムジュース  15ml
  • 自家培養コンブチャ スコビー  適量
  • グラニュー糖 × 60g

マスカットジュースを沸騰させラ・フランスの紅茶茶葉を加え弱火で15min煮詰める。

味を確認しグラニュー糖を加え、溶けたら濾して氷水で急冷し絞ったライムジュースを加える。

冷えたら保存瓶に注ぎスコビーを加え発酵させる。2日程発酵させ味を確認しボトリング。

リキュールグラスに千切りにしたシトラスピールを入れ、クラッシュアイスを8分目くらいまで入れる。

自家製コンブチャを注ぎソーダアップ。ピールが散らばるように軽くステアする。

自家製コンブチャ

Interlude : 押水いちじく

Pairing Drink : ライムコーディアル

焦点 : add

地物のイチジクとパクチーなどの香草を使い、チリペッパーを漬けた甘酢をかけて食べる一皿。

作った本人は春巻きと言い張るが全く春巻きに見えない。そもそも巻いてないし…

ただ、口にすると言われた通り春巻きだ。中華の春巻きではなくアジアンテイストな生春巻きのような印象。

この一皿にはフレッシュなフルーティー感と酸味を持たせたドリンクを合わせたいと思い、ベリーとハイビスカスを発酵させた自家製コンブチャに、アジアンテイストに合わせコリアンダーなどのスパイスをインフューズさせたものを合わせてみた。

悪くない。悪くないけど1コースに発酵ドリンクが2杯、しかも連続だと面白みが無いので却下。

そこでもっと単純に考えてみた。甘酢をかけた上でさらにちょい足しで何かするとすれば、ライムを搾りかけると美味しそう。ということでライムを使ったモクテルにする。

以前からよく作っているライムコーディアルシロップに、ここでもアジアンテイストに合わせ、いつもより多めにハーブを使い爽やかで複雑に。青い香りをより強くしてみた。

単品のモクテルのバランスでミックスすると、ペアリングとしてはどうしても甘みが気になってしまうのでバランスを変え甘みを抑えた。ハーブを多めに使ったおかげでコーディアルの分量を減らしてもしっかり香が立ち上がる。

コロナ禍で旅行に行きたくても行けなかった方も多いと思う。生春巻(ではないけど)とライムコーディアルのペアリングで、東南アジアの高級レストランで食事しているかのよなトリップへ誘なうイメージが出来た。

ライムコーディアル

  • ライムコーディアルシロップ 10ml … ※
  • FEVER TREE premium soda  50ml
  • ライムピール

※ライムコーディアルシロップ

  • レモングラス 適量
  • ライム 5 : グラニュー糖 3
  • レモンバーム  適量
  • フレンチタラゴン 適量
  • エルダーフラワー(ドライ)適量

ライムをカットして実を綺麗に分ける。ライムの実の分量を計測し、煮沸消毒した保存瓶の中で5:3の割合でグラニュー糖を全体にまぶす。ライムの味や香りに合わせ分量を調節したハーブを軽く潰し保存瓶に一緒に入れる。

※仕入れたフレッシュライムの酸味が強く味の厚みが弱い感じであればレモンバームを多めに。逆ならレモングラスを多めに。

グラニュー糖の浸透圧でライムのエキスを絞り出し、同時にハーブの香をインフューズする。

一晩もしくはさらに半日置き、グラニュー糖が全て溶けきりハーブの香りがしっかりインフューズされていることを確認し濾し器で濾す。その際、ハーブを取り除きライムの果肉をペストルで潰してエキスをしっかり落とす。

濾したコーディアルシロップをボトリングし、ワイングラスに規定量注ぎソーダアップして軽くビルド。ライムのピールをグラスの上で振りかけ、フレッシュなライムのフレーバーを纏わせて完成。

※大量のライムの皮が出ますが、アルベドを除去し自家蒸留のフレーバーウォーターに使用したり、精油をとってアロマオイルに活用したりします。

Verse : 墨

Pairing Drink : しば漬け

焦点 : 引き締め

真っ黒な見た目の料理とは対照的に綺麗なピンクのドリンクを合わせる。

真っ黒でどこが食べられるところかわからないかもしれないけれど、真っ黒なゴボウの下にはうなぎが居る。ゴボウを鉄鍋で2日ほど炊くと真っ黒になるらしい(職人技です)

僕も人のことを言えないけれど、この店の人間は表現したいものがあれば、それが何日かかろうがやってしまう癖がある、変態の集まりである(笑)

ドリンクではミョウガの香りで炭焼きの香ばしいウナギの脂とにおいをキュッと締めつつ、ギャップを持たせすぎない中和役として焼いたナスのほっくり感。ナスは皮を剥きポリフェノールの一種であるナスニンを抽出し、ミョウガとナスニンでキレイなピンク色に仕立てる。

ナスとミョウガと塩。ハイ、しば漬けです(笑)

しば漬け (約16杯分)

  • 中ナス  2本
  • ミョウガ  4ヶ
  • ジュニパーベリー  1g
  • ドライレモングラス  0.5g
  • プレミックスウォーター 400ml ※浄水400ml+星子シロップ 2tsp
  • レモンジュース 1/2tsp(1杯)
  • 自家製カラーソルト  適量 ※マルガリータソルトにハイビスカスティーで着色した塩

ナスの皮をピーラーで剥きアク抜きをしておく。浄水に星子シロップをプレミックスしておく。

アク抜きしたナスの水気をしっかりとり、鍋で軽く焼き目をつける。潰したジュニパーとレモングラスを加え軽く加熱し香りを立たせる。プレミックスウォーターを鍋に注ぎ、千切りにしたミョウガ、ナスの皮を加え沸騰させる。

沸騰後弱火にし10min煮詰め、漉し器で濾す。漉し器の中のナスをマッシャーで潰し、ナスが含んだエキスも抽出する。

急冷しボトリング。提供時にレモンジュースを加えて調整する。

フチの1/3ほどをカラーソルトでスノースタイルにしたグラスに注ぐ。

カラーソルトは濃いめに抽出したハイビスカスティーをソルトを敷いた鍋に一滴たらし火から外して混ぜる、火にかけまた一滴垂らす、の繰り返しで色付け。

Bridge : 迷いガツオ

Pairing Drink : 隣の芝生は青い

焦点 : オイル

魚料理は幻の鰹とも言われる迷いガツオと菊の花を使ったクリームソース。迷いガツオの上品な脂にはココナッツのオイル感を合わせ、クリームソースとも繋いでくれる。そこに、塩味と緑の野菜の香りと旨みを重ね、料理の味わいの層をさらに一層厚くしたいと考えた。

緑の香りはフレッシュで爽やかなものではなく、奥行きのある柔らかいものにしたいので、低温加熱して詰めたものを。クリームソースと相性の良いグリーンアスパラとグリーンピースにした。

群れをはぐれ北上せず日本海を回遊しいる迷いガツオは、北陸以外ではなかなか味わえない幻の鰹。そこに、金沢では恐らく(現段階では)僕しか作ることが出来ないであろう、特殊な機材で抽出したリキッドとガーニッシュのモクテル。

コロナ禍で北陸に来たくても来れない県外の方々に”羨ましいぃぃ” ”金沢行きたぃぃ”と思わせるようなペアリングを。さらには、同席したアルコールペアリングの方々が ” 何あれ!?飲んでみたい! “と指咥えさせたいという僕のSっ気を込めたネーミング “ 隣の芝生は青い ” 

隣の芝生は青い

  • cocomax ココナッツウォーター 30ml
  • セントリフュージ グリーンリキッド 10ml … ※ケミカルセパレーション
  • グリーンパルプ〈garnish〉
  • エディブルフラワー〈garnish〉

※セントリフュージ グリーンリキッド

  • グリーンアスパラガス 6本
  • グリーンピース(缶)1缶
  • アスパラの茹で汁  100ml

お湯を張った鍋に0.5%の塩を加え、ピーラーで剥いたアスパラの硬い部分を茹でる。皮から香りが出たらアスパラを火の通りにくい根の部分から茹でていく。数秒加熱しある程度火が通ったら鍋から取り出し流水で冷やす。冷めたら水気を切りざく切りにする。

ブレンダーのカップにざく切りにしたアスパラ、グリーンピース、グリーンピースの缶の汁、アスパラの茹で汁を入れ撹拌。しっかり攪拌できたらロータリーエバポレーターのフラスコに入れる(2回に分けて)

ロータリーエバポレーターで濃縮させる。
設定は真空度80hPa/回転数250rpm/ホットバス45℃/冷却水 -15℃

蒸留水が50mlほど取れたら蒸留停止。一次側の凝縮したアスパラとグリーンピースを遠心分離機にかける。

設定は温度6℃/回転数4000rpm/時間15min
ストレーナーで濾して遠心分離した液体のみを取り出す。

分離した固体部分をクッキングペーパーに伸ばしディハイドレーターでドライにし適当なサイズに割りエディブルフラワーを飾る。

ココナッツウォーターとグリーンリキッドをミックスしカクテルグラスに注ぐ。
グラスのフチにガーニッシュを飾る。

Chorus : 牛ヒレ フォアグラ

Pairing Drink : 焼きパイン infused chili

焦点 : 加熱

西京焼きの焼けた味噌に合わせ、甘みとコクと少しの辛みを持たせたいと考えた。

加熱したフルーツの熟した感じの甘みは味噌との相性がよく、牛に合わせるならパイナップルかなと思い、カットしてオーブンでローストした。

ローストしたパイナップルは甘みが引き出され、ラム酒を樽で熟成させたような香ばしさと深みと程よい酸味を持つ。ベースはこのパイナップルで合わせてみる。

より香ばしさを加えるため、煎った大麦を煮立たせたリキッドをブレンド。唐辛子を一緒に煮出してスパイシーさも持たせてやる。

ローストパインの方は長期熟成したフルーティーなダークラム。大麦の方はスパイシーな島系のスコッチで、この異なるスピリッツをミックスしてお肉に合うカクテルを作るイメージで、ノンアルコールのモクテルとした。

グラスを口に運ぶ際にふわっとあがる、アルコール度数の高いスピリッツ特有の香りのあがりをイメージして、グラスの中にはウイスキーオークチップの燻煙を充満させ、まずは樽の甘い香りと焼けた香ばしさを感じられるようにぐ仕立てた。

焼きパイン infused chili

  • ローストパインリキッド 30ml … ※
  • ウイスキーオークチップ 適量 – Smoke Top

※ローストパインリキッド

  • ローストパイン 270g
  • バーリーマックス(大麦) 80g
  • クルミ 30g
  • フェンネルシード 6g
  • レーズン 20g
  • 唐辛子 1g
  • 水 1000ml

バーリーマックスを乾煎りし、香りがたったら荒く砕いたクルミとフェンネルを加えさらに煎る。全体の香りがたったら水を入れ、レーズンと唐辛子を加えて沸騰させる。

沸騰後弱火で15min加熱し、火を止めて30min置く。

その間に、パイナップル丸々1個をカットし200℃のオーブンで25min焼く。裏返して180℃で10min焼く。

30min置いたバーリーマックスをストレーナーで濾して、ローストしたパイナップルを加えハンドブレンダーで撹拌する。

ストレーナーで濾して急冷しボトリング。

グラスにローストパインリキッドを注ぎ Smoke Topを被せバーナーで炙りグラスを燻煙で満たす。

Solo : 牡蠣の炊き込み / 松茸の炊き込み

裏 Pairing Drink : Islay mist

焦点 : 潮

※好みが分かれるのでwaiting bar で提供する・しないを判断

牡蠣の持つ磯の香りには牡蠣の産地でもあるスコットランドのアイラ島のウイスキーを合わせる。アイラ島のウイスキー、アイラモルトは強烈でスモーキーなピート香と苦味が潮の香りを思い起こさせるスコッチウイスキー。現地ではモルトを飲みながら生牡蠣にレモンを絞って食べる合わせ方が定番で、観光客は皆その相性の良さに舌鼓を打つという。

いや。ノンアルコールペアリングでどぎついアイラモルトて…
もちろん飲んでもらう訳ではありません。

僕がノンアルコールでペアリングを組む際に重要視する要素で ” イメージの連想/解釈 “ の部分。

香りは情景を脳内にイメージさせたり記憶を呼び戻したり、イメージの連想に直結する香りはかなり重要なファクターだと思う。なので、潮の香りのみをペアリングする。

Islay mist

  • Laphroaig 10y / mist
  • レモンピール

グラスにレモンピール、ラフロイグの順で吹き付ける

Alcohol Pairing Drink : Whisky & soda Ardneg ten / 響 Japanese Harmony

牡蠣の炊き込みごはんにはこちらもアイラモルトの代表格『アードベック 10y』を、松茸には『響 japanese Harmony』の花のような香と甘みを、共に濃いめのソーダアップでアルコールペアリング。

  • Single malt 10ml
  • Fever tree premium soda  40ml
  • Cut ice
  • Lemon peel

Outro : 黄桃 エストラゴン / バターナッツかぼちゃ

Pairing Drink : 洗濯 ( September ) / 熟成芋 ( October )

焦点 : 除去と添加 / ほっくり

黄桃の甘みにフレッシュなフルーティー感を重ねるイメージで地物のイチジクを使ったモクテルを合わせた。砂糖と煮詰めれば美味しいジャムやシロップになりそうだけど、やることはその真逆。

純水(RO水)でイチジクを煮詰め香りを移し、鍋の中でマッシュしてエキスも出す。その際アニスも一緒に煮詰めてエストラゴンにも香りを重ねる。これをストレーナーでしっかり漉してフレーバードイチジクエキスを抽出する。

無調整ミルクをフレッシュレモンジュースでウォッシングしてタンパク質を除去。ミルクの香りだけ残ったクリアミルクにイチジクエキスをmixする。味わいとして少し引き締めたいところだけど、レモンジュースを追加して酸味で締めると酸っぱさが淡いイチジクのフレーバーを超えてしまう印象になるので、塩をほんの少し加え塩味で味を引き締めた。

洗濯

  • フレーバードイチジクエキス 10ml ・・・※1
  • ウォッシングミルク 30ml ・・・※2

※1 フレーバードイチジクエキス

  • イチジク 2ヶ
  • RO水 300ml
  • スターアニス 1ヶ

カットしたイチジクとRO水を鍋に入れ沸騰させる。弱火にしてスターアニスを加え蓋をして10min煮詰める。火を止め鍋の中でマッシャーでイチジクを潰す。ストレーナーで漉して急冷する。

※2 ウォッシングミルク

  • 無調整ミルク 300ml
  • フレッシュレモンジュース 3tsp

湯煎で65℃まで温めバースプーンを使い1tspづつ静かにレモンジュースを加えステアし続けウォッシング。

10月からはサツマイモを使ったモクテルに。

秋を感じるほっくり感はバターナッツかぼちゃとの相性も良い。

サツマイモは焼くとトロトロの蜜を出して甘くて美味しいけれど、ここで欲しいのはその蜜ではなくサツマイモの香りとホクホクした繊維感。なのでサツマイモは焼かずに真空パックし低温で加熱し続け火を通すだけ。

甘みと香りを閉じ込めたままミルクとブレンダーにかけて、ピューレ状にしてから鍋で煮詰めて初めて甘みを引き出す。煮詰めたピューレを遠心分離させエキスだけを取り出す。

熟成芋

  • 熟成芋リキッド 3tsp・・・※3
  • ESP  10ml

※3  熟成芋

  • サツマイモ 150g
  • 無調整ミルク 250ml

洗ったサツマイモを真空パックしディハイドレーターで45℃で3~4日加熱し続ける。皮をむき手で潰しながらブレンダーカップに入れる。ミルクを加えしっかり攪拌。鍋に移し15minほど煮詰めて甘みと香りの立ちを確認。バットに移し粗熱を取る。

遠心分離機( 16℃/4000rpm/15min )にかけストレーナーで濾す。

元音響エンジニアのバーマン。
外食はコンサートと同じ。料理やドリンク、空間やサービスで楽しいショーを体験する時間。ステージを彩るドリンクで、ショーの一翼を担う。