2021.01.05

遊び尽くし 手づくりハム・ソーセージ【私の食のオススメ本】

  • 書名:遊び尽くし 手づくりハム・ソーセージ
  • 著者:松尾尚之
  • 発行所:創森社
  • 発行年:1997年初版 2017年第5刷

著者の松尾尚之氏は肉卸売会社を経て農事組合法人伊賀銘柄豚振興組合に転職した。この組合は農事組合法人「伊賀の里モクモク手づくりファーム」から株式会社となり、松尾氏はここで、手づくり工房の工場長として勤務、良質・安全なソーセージやハムをつくり、手づくりウインナー教室を開催し、その後2代目社長となった。

その肉一筋の松尾氏によって1997年に出版されたこの本は、手作りハム・ソーセージの方法がシンプルなイラストと文章で実にわかりやすく書かれている。これはハム職人ではなかった著者が何も知らないところからスタートしたということに関係するのだと考えられる。2017年まで増刷されているので内容は信頼できる。

タイトルにある「遊び尽くし」とは何か。ハム・ソーセージへのつきない好奇心ことではないだろうか。章の一つに「一味違うハム・ソーセージを作る」というのあり、見出しには、日本の香り、粋、究極、オツ、モモ肉の面目躍如、ワイルドという文字が並ぶ。

その原点はこれまでの養豚業からの「脱却」ということだと松尾氏の最近のインタビューで理解した。松尾氏は「自分たちが作ったものに自分たちで値段をつけて販売することができないことに三重県旧阿山町の養豚農家は疑問と不満を持っていた。市場が価格を決めるのではなく、自分たちが値段を付けるのが本来の姿ではないかと。」それが出発点と語っている。

それは最初の銘柄豚振興組合という組合の名称にも表れている。

この本は誰もが、ロースハムばかりでなく、ミュンヘナーバイスブルト、ニュールンベルガーブルスト、チョリソー、レバーペースト、ラックスシンケン、スパルトシンケン、生ベーコン、ドライサラミなどに挑戦して楽しめる。ただし、国産の新鮮な豚を使用することだけは諦めないでほしい。それは本書を読めば理解できるはず。

WRITER Joji Itaya

出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。