2021.06.16

日本外食全史【私の食のオススメ本】

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  • 書名:日本外食全史
  • 著者:阿古真理
  • 発行所:亜紀書房
  • 発行年:2021年 

2021年の3月に初版が出てすぐ5月に2刷となっている。よっぽど初刷部数が少なかったのか、慌てて増刷したように推察する。売れないと思ったのか(笑)。文中にもあるが、コロナ禍を意識した編集でもある。いま、歴史を振り返ってこれからを考えなければならない多くの事業者が手にしたのかもしれない。

阿古真理は作家であり、生活史研究家だ。食のトレンドと生活史やジェンダー、写真の分野と幅広く執筆活動をしている。本書の後に出版された著作が『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた。(幻冬舎 2021)』という本である。

600頁におよぶ本書をまとめるために脳を博覧強記フル回転的したためか、執筆作業のためにバランスを崩したのか、と思ったが15年ほど前の体験のようだ。しかし、この本はそう思わせるほど日本における正しく外食の「全史」としての内容になっている。

またここまで広く、和洋中の料理と歴史、食材が入ってきた経緯や料理人、チェーン店、グルメ漫画・ドラマ・雑誌が負ってきた内容を細密画のように書き込んである。それでいてこの読みやすさはなんだろう。

本人は「グルメの専門家」ではなく、高級料理店にもチェーンの居酒屋にもあまり行ったことがない、と語る。体験を前提にすると歴史は書けない、と続ける。
助けになったのはダンボール100箱分の資料とウエブサイト。前述、博覧強記と書いたのはこのことだ。これだけの資料は頭に入らない限り文章に落とし込めない。

日本の外食は大阪万博から始まった。本書の一部を拾っていくと「食は関西にあり」からはじまり、「大阪の箱寿司、神戸の中華と洋食」「大阪万博の国民的体験とチェーン店」「hanakoとティラミス」「グルメブーム」「フレンチとイタリアン」「包丁人味平」から「グランメゾン東京」「ミシュランとは何か」「エスニックブーム」「カフェ飯とはなんだったのか」「インスタ映え」「フードツーリズムの時代」「食の都、山形」「サミットの料理人」とある。

文字だけ見ると外食の歴史の軽いおさらいのようだが底と視点は深いところにある。そうだったのかと思うのだ。そして「料亭文化」「居酒屋の日本史」「食事処の発展」「江戸のファストフード」の部門へ。

そして「辻静雄」「谷崎潤一郎の中国料理」「町中華」「ソウルフードになったラーメン」「焼け跡の東京、ギョウザの秘密」「カレーとアジア飯」。阿古真理はエピローグでは「なぜグルメ化が進んだのか」「コロナショック」「未来のレストラン」「絶めしを救え」「もとSEが開いた定食屋」「1日100食限定の店」のことを書いた。

今後、この手の本ができるとしたらこの本が原本になるのは間違いない。

WRITER Joji Itaya

出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。

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