- 書名:全日本「食の方言」地図
- 著者:野瀬泰申
- 発行所:日本経済新聞社
- 発行年:2003年
本書は日経新聞NIKKEI-NET ウイークエンド版の「食べ物 新日本奇行(アーカイブ)」を単行本化したものだ。現在も続いているTV番組「秘密のケンミンSHOW」はここからの発想ではないかと推測している。なぜならこの本は2002年に食に関する一般への問いかけをし他地域の人間が驚くその地域の食スタイルを検証するもので、番組より先、2003年にその内容がまとめられ発行されているからだ。その後、TV番組の方は2007年あたりにパイロット版がスタートしている。
「秘密のケンミンSHOW」という番組と全く違うのは「ここの県民はこうやって食べるのが常識」という決めつけはなく、一つのテーマに対して一般の人(一般とは言えない女優の三林京子は熱心な投稿者だったらしい)が「ご意見」を投稿し、それに著者である日経新聞文化部編集委員の野瀬泰申がコメントを加えるといったラジオの深夜放送みたいなスタイルだったことだ。
この「ご意見」を検証していくことで食の方言「地図」ができていった。ただ、タイトルの食の「方言」というのはだいぶ無理があるなあ。ほぼ言葉のことではなく食スタイルのことだからね。
テーマは・・天ぷらにソース 甘納豆入り赤飯 ソースカツ丼 納豆に砂糖 馬ホルモン焼き鳥 ホルモン天ぷら ばばへらアイス エスカロップ 栗の甘露煮入り茶碗蒸し 牛カツ 冷麺と冷やしラーメン・・・
個人的には、徳島で仕事をしていた時に、赤飯に砂糖をかけるスタッフがいたので徳島は砂糖なんですね、と言ったら他の地元民から「それは鳴門だけだよ」と言われた経験がある。鳴門は塩の製造で有名なので、砂糖なのかと不思議に思ったものだ。
食の方言ということだが、はたして食に標準語はあるのだろうか。
出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。