2019.10.24

大人のピクニック

私にはピクニック仲間がいる。

彼女はピクニックなどのイベント毎が大好きで、私には作れないとても高尚な料理を持ち寄ってくれる。
時にはガスコンロを持参して、熱々の手料理を家の近所の川沿い(※)で食べる。

この屋外で食べる『温かい』料理には、ある種の魔力が潜んでいる。いつもの食べ慣れた鉄板料理も、お鍋料理でも青空の下で食べるだけで殊更美味しく感じるからだ。

わたし達のピクニックにはアルコールが欠かせない。ビールから始まり、料理に合わせたペアリングもきちんと考える。
そして服装にも余念がない。毎回彼女とリンクコーデをして、着物を召したり、オーバーオールを着たり、ギンガムチェックで合わせたり。

この拘りが、わたし達が『大人のピクニック』と呼んでいる所以だ。

河原にレジャシートを敷き、お互い持ち寄ったお弁当を広げ、思いおもいにアルコールを呑んで、芝生の上に大の字で寝転ぶ。

私は心の中で叫ぶ。『此れだッ!』と。

昼過ぎから始まり、肌寒くなるまでそれは続く。
ほろ酔いになった頃、カラオケボックスへと移動する。二次会の始まりだ。
其処で彼女は呑み続け、私は食べ続け、2人は唄い続ける。

思えば、ピクニックで食べる料理はいつもと変わらないメニューでも美味さが格別である。唯のお握りも、サンドイッチも、いつもと違う開放感あふれる野外で彼女と食べるだけで、非日常感という付加価値が付いてくる。

私は彼女と過ごす、大人のピクニックが大好きなのだか、彼女には未だ内緒にしておこう。

※河川敷などでの火器の使用は場所や条例で決められていますのでご注意ください。

WRITER Taishi Joh

沖縄にルーツを持つ父親と、韓国人の母との間に産まれ、幼い頃から日本食とは一風変わった食卓で育ちました。
転勤族の父親に付いて、全国津々浦々に移り住み、グルメな母親の影響で週に一度は外食をしていました。
それでもやはり、一番好きな食事は母親の手作りです。母も小まめに料理を作り、夕飯の家族一緒の団欒はかけがえのない想い出です。
今でも月に一度の頻度で、田舎の特産品や母親手作りの常備菜が届きます。
そんな私が、もう永住するしかないと決めた大好きな街、金沢。
其処から全国、ひいては全世界に向けて食のあり方を発信することが出来る私たちの会社を誇りに思い、末端ながらお仕事出来る喜び…と、美味しい賄いを噛み締めている毎日です。