- 書名:発酵の技法 世界の発酵食品と発酵文化の探求
- 著者:Sandor Ellix Katz サンダー・エリックス・カッツ
- 発行所:オライリー・ジャパン
- 発売元:オーム社
- 発行年:2016年初版 2021年 第6刷
Sandor Ellix Katzは学者ではなく『発酵実験家』である。発酵のバイブル「天然発酵の世界(築地書館)」の著者だ。巻頭に17、8ページの写真資料がまとまっている以外、本書はほぼテキストだけと言っても良い。それも500ページほど。
本書は世界の発酵食品、そして「発酵」にかかわるDIYから事業化(多岐にわたりすぎていて“まで”という言葉が合わないが)まで「あらゆる事柄に答えてあげるよ」という本である。
その文字量に畏れを抱きながら、ちょこちょこと読み進むと、意外と引き込まれてしまうのである(もちろん読破などしていない。本が重すぎて寝転んで読めないので置いて読むしかないし)。
『人間は料理をする』の著者、マイケル・ポーランは(本書について)「今まで料理本を読むことはあっても、それに乗っている料理を作ることはなかった。本書は、どこは違ったのだろうか。ひとつの理由として(著者の)情熱を込めて書いている発酵の変成パワーの説明があまりに説得力があるので<どうなるか試してみたくなってしまうからだ。>」と書いている。
そして「小学生のころ、酢と重曹を混ぜるとすごいことが起こるよ、と先生が教えてくれた時の気持ちに似ている」とも書いている。
フルーツや花を加えたミードの作り方、ホエーで缶詰食品を生き返らせる方法、サワー種培養微生物のこと、アラブ・中東地域の乳製品と穀物を発酵させた食材「キシュク」、カビを培養したい、肉・魚・卵を発酵させたい、自分でぬかをを発酵させて食品廃棄物をピクルスにする方法・・などを知りたい人は読むべき本。
※どんな本かをもう少し真面目に知りたい人はamazonなどの解説を参照してください。巻末に掲げられた「文化復興主義者のマニュフェスト」を最初に読むと、著者がなぜここまで発酵にこだわっているかということがわかります。
出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。