2023.04.25

いちばん大切なたべものの話【私の食のオススメ本】

いちばん大切な食べものの話

  • 書名:いちばん大切なたべものの話
  • 著者:小泉武夫 井出留美
  • 発行所:筑摩書房ちくまQブックス
  • 発行年:2022年

小泉武夫は東京農大の名誉教授で誰もが知る発酵の第一人者。井出留美は日本の食品ロスジャーナリスト。株式会社office 3.11代表。本書は井出留美氏が小泉武夫氏に質問するスタイルで「今こそ日本の食を立て直そう!」と<私たちのからだをつくる食べものはどうやってできているんだろうという?>というところから考える本である。

まずは「これってどうなってるんですかね」的な軽い感じで進むのだが、判っているようで判ってなかったことが「おー、そうなのか!」「えー、そんなになってるの!」と頭に入ってくる。

カロリーベースと生産額ベースの自給率

カロリーベース38%(生産額ベース63%)という自給率の日本に住んで「とっても低い日本の食料自給率」への疑問。食料自給率を改善したドゴール大統領を例に読み解く「改革に成功した先人」から学ぶ必要性。

本物のキムチは免疫力を高めるが<ちゃんと発酵させなければキムチではない>あたりから小泉先生節登場。食べ物(作るのも食べるのも)にも正義心を!という「ものの価値を知る」ことの重要性。

「日本の食のために今すぐ取り組むべきこと」では、農業が国の力を決める/ワクワクする農業/耕作放棄地で重要なタンパク源<大豆>と<資料用稲を作る>/学生や社会人を農業に動員/農業再興に国は手を尽くすべき・・・

ここで紹介されている「マイペース酪農法」→「売れない牛乳に付加価値をつける」というのが面白い。

酪農家の三友盛行さんは豚を全部山に放し飼いにしている。かってに運動してどんぐりやミミズを食べているからおいしい。この方法でで育てている乳牛が70頭ほどいる。これが「マイペース酪農法」だ。牛は草しか食べない。普通は与える濃厚飼料を食べさせないから牛乳が水っぽい。ところがこの牛乳でチーズをつくったら日本一になってJALのファーストクラスのデザートに選ばれた。安心でおいしいのだ。小泉先生はこういうブランド化を薦める。

そして「日本の伝統的な食生活を見直す」。これは小泉先生らしい内容なのだが、和食は最高の免疫食/(豆腐とひきわり納豆を入れた旅籠の味噌汁は)江戸時代の超スタミナ食/大豆イコール牛肉・・・

うーん、このお二人ならでは展開ではあるのだが、もはやそこに引っかかっていてはいけない気がする。彼らが長く訴えてきた問題が現実になっているのだから。そしてそれらが国をあげ解決に向かっている様には見えないからだ。「そうは言ってもさ」という気持ちを一度忘れて読んでみるといい。

そしてどうだろう、リビングで子どもとこの本を毎日一緒に読んでみてはどうか?
「お父さん、日本は外国から買えなくなったら食べ物がなくなるの?」「これまで通りコンビニのお菓子は買っていいの?」さあ、どう答えよう。

答えは決まっていない。でもわれわれ大人は子供にその理由を説明する必要がある。考える必要がある。子どもも自分も『からだは食べたものでできている』から。

WRITER Joji Itaya

出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。