2021.08.07

現存最古の醤油(多分)を届けに行ってきた話 (前編)

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これは緊急事態宣言とかそんなのをかい潜り、世界現存最古の醤油を渡しに行った男の物語である。
まあ、私のことなんだけれども。
まず、話を整理せねばならない。

ウチにある謎の瓶

以前から気になっていた我が家のアイテムがこれである。

掛軸とか古物と一緒に我が家に伝えられし謎アイテム。
RPGゲーム的にいうと「なぞのえきたい」
振ると中がチャポチャポいうので液体なのは間違いない。
親族に聞いてもわからない。

叔父は貴重な古い酒だと思って開けて飲もうと思ったことがあるらしい。
しかし冒頭にもある通り、これは醤油なのである。
JAPAN SOYA
とは、日本の醤油という意味である。

明治、大正期と日本は盛んに海外に醤油を輸出していた。
海外移民の増加に伴って醤油の海外輸出は伸びていくが、それ以前から欧州でも調味料として珍重されていたのだ。
 
上にはゴム状の黒いコールタールが付いていて未開封。
さて、これはいつ頃の物だろうか。
そして、どこが作った醤油なのだろうか。

埃だらけだが、下手に拭くとラベルが剥がれるのでハタキをかける程度のまま放置である。

このラベルには「TOKIO S SHA」とある。
このラベルが2つのヒントを与えてくれる。

2つのヒント

一つはTOKIOの文字だ。
この表記から大体の時代を絞ることができる。
これは現代でもドイツ語などでも東京のことをTOKIOという。
しかし、明治期には海外ではどこの国でもTOKIOがよく用いられていた。
例えば、1879年創業・日本初の保険会社「東京海上保険会社」の系譜である東京海上日動の英語表記は現在でもTokio Marine & Nichido Fire Insurance Co., LtdとTokio表記を用いているが、これは海上保険の本場イギリスが東京をTokioと呼んでいた明治期の頃の名残である。

国内ではトウケイもトウキョウも明治20年頃まで両方用いられた。坪内逍遥や山田美妙も、東京をトウキヤウ・トウケイと各々が好きに訓じている。
アルファベットはといえば、明治初期頃は表記は東京の漢音であるTOKEIか、海外表記のTOKIOかの2つがみられるが、明治15年頃からTOKIO表記が優勢になってくる気がする。

TOKYOアルファベットが主流になっていくのは大正期という印象がある。
まあ、ここら辺の年代を特定するつもりで調べたことはないが、外務省外交史料館の外交資料を整理していた限りではなんとなくそんな気がする。別に学術的な読み物でもないので、「知らんけど」ぐらいの適当さでいいではないか。アバウトそんな感じである。
いずれにせよ、TOKIO表記があることから、この醤油は明治のものだろうという予測が成り立つ。

さて、さらに絞りをかけるヒントが
「S SHA」
の文字である。
あと3文字がつい数年前まで残っていたのだが、剥落してその破片がどこかに行ってしまった。
その文字がS「H」xxx「AI」SHAである。
このラベルに書かれていたのはおそらく、
TOKIO SHOYU KAISHA(東京醤油会社)に他ならないだろう。

東京醤油会社、これは後のキッコーマンである。
茂木佐平次が1881年に東京醤油会社として株式会社を始め、海外進出を狙っていく。( 詳しくはこちら、キッコーマンのHP参照 )
時期的にいえば1881年は明治14年なのでTOKIO表記の時期と一致してくる。
この醤油が遡れる一番古い年代は明治14年(1881)だから、今から140年前の醤油の可能性もあるということだ。

キッコーマンさんに問い合わせてみた

そんなわけで、三石はキッコーマンのお問合せ窓口にメールをしてみた。
カクカクシカジカで家には東京醤油会社の未開封醤油があるので、もしご興味あるなら寄贈したいのですが、と。
そうしたところ、即日にキッコーマン国際食文化研究センターの山下所長から返事を貰う。

未開封で中身残存は見たことがないらしい

よし、これはもう寄贈しかないですな。
カエサルのものはカエサルへ。
そして直接会って、コレが一体何物であるかを聞こうじゃないの。

[後編に続く]

私は、だいたい数日に一食しか食べない。一ヶ月に一食のときもある。宗教上の理由でも、ストイックなポリシーでもなく、ただなんとなく食べたい時に食べるとこのサイクルになってしまう。だから私は食に対して真剣である。久々の一食を「適当」に食べてなるものか。久々の食事が卵かけ御飯だとしよう。先に白身と醤油とを御飯にしっかりまぜて、御飯をふかふかにしてから器によそって、上に黄身を落とす。このときに醤油がちょっと強いかなというぐらいの加減がちょうどいい。醤油の味わい、黄身のコク、御飯の甘さ。複雑にして鮮烈な味わいの粒子群は、腹を空かせた者の頭上に降りそそがれる神からの贈物である。自然と口から出るのは、「ありがたい」の一言。

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