- 書名:とうがらしの世界
- 著者:松島憲一
- 発行所:講談社
- 発行年:2020年
6000年前にはすでに食されていたのではないかという唐辛子は、1492年まで中南米のみで栽培されていてコロンブスによって世界へリリースされた。そして日本には1500年代にポルトガル人によって伝えられたという説や、秀吉の朝鮮出兵で持ち帰った説がある。
江戸時代にはすでに全国で80種類以上の品種が栽培されていた。平賀源内は「蕃椒普」としてトウガラシ図鑑も作っていた。
外敵からの防御本能から辛くなったと言われる唐辛子が、その辛さゆえに広まって行ったのは何故か。
この本は農水省出身の信州大学農学部准教・松島憲一によってまとめられた唐辛子とはなにかを知ることのできる1冊。
唐辛子の起源、人間はいつから唐辛子を食べ始めたのか?なぜ辛いのか、ダイエットにはできるのか、唐辛子は機能性食品?キネンセ種とは?原産地呼称制度があるピミエント・デ・パドロンとは?など幅広く解説されている。
著者がまとめたと書いたが、甘いシシトウ、辛いシシトウの話においては、著者の小学生だった長女の自由研究が使われているところはなんだか微笑ましいい。
メキシコ人は唐辛子で出汁をとり、四川料理ではその香りを生かす。そしてカプサイシンという辛さの持つ謎。とくにこの本を読むと日本には独特な唐辛子文化があることがわかる。そして、人造肉、代替え肉がどんなに広まっても、この天然の辛味はなくならないのではないだろうかとふと思ってしまう。人工的なものに100%とって代わることが想像できない。
また近隣の国々との関係も唐辛子を通して見えてくる内容もあり、著者の「唐辛子目線」に引き込まれる内容になっている。
出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。