- 書名:やさいたちのうた(絵本)
- 著者:藤富保男:詩 谷口広樹:絵
- 発行所:福音館書店
- 発行年:1987年
英王室キャサリン妃が立ち上げたロイヤル・ファウンデーション・センター・フォー・アーリー・チャイルドフッドが、2023年1月31日新キャンペーンとして「シェイピング・アス( Shaping Us)」をローンチした。
「5歳までの発達が人生を形作る上で極めて重要である」という認知を高める「子どもたちの人生の最初の5年間にスポットライトを当てる」ことを目的とした啓発キャンペーンだ。
この考えは、行動分析学の創始者バラス・スキナーによって開発された「目的とする行動の変化にたどり着くために、その方向で少しやりやすい変化をもたらす所から始め、徐々に目的に近づけて行く」というシェイピング法に基づく。
個人的に、読み聞かせの年代の幼児が食材と触れるのも、人の形成には重要なはず(食べ物とは毎日、一生つきあうのだから)だと考えている。もっとも身近で触れられる生きている食材というのは野菜だろう。そして幼児が野菜に興味を持つきっかけにしてもらいたい絵本が本書だ。人生の最初の2歳から4歳向けだ。
詩は故・藤富保男(1928年 – 2017年)。詩は映像、イメージと言っていた観念や概念、思想といったものを排除(言い切れないかもだが)したユーモラスな作風を得意とした詩人。絵は谷口広樹(1957年 – 2021年)。イラストレーター、デザイナーであり後期は和のテイストの作品やプロダクツも発表していた(デビュー当時の谷口さんには2度ほど仕事をお願いした)。どちらも故人だ。
登場する野菜は、たまねぎ、にんじん、れんこん、とまと、かぼちゃ、なす、きゅうり、たけのこ、きゃべつ、だいこん、じゃがいも。
5歳までにこの絵本を読み聞かせしてもらって、畑でその野菜に出会うことがあったら、きっと野菜を好きになるのでは・・と思うのだ。少なくとも興味だけは持ってもらえるはずだ。
かぼちゃ かぼちゃ
がぼちゃに がぼぢゃ
かぼ かぼ がぼっと
かぼちゃの かほちゃ
かぽ かぽ かぽっと
かぼちゃの かほちゃ
こんなにこどもがゲラになってしまいそうな詩は素敵だ。
石川には「加賀野菜」というものがある。こんな絵本になれば良いのになあ。
本書は食を伝えるということを、改めて考えるための一冊でもある。
出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。