2020.06.21

『割子、何枚食べる!?』〜そばと言えば、出雲そば〜

出雲そばと天ぷら

私の故郷である山陰地方の出雲には、日本三大そばの一つである「出雲そば」がある。(因みに残りの2つは岩手県のわんこそば、長野県の戸隠そばである。)

昔から、私にとってのそばと言えば「出雲そば」であり、その食べ方として特徴的なのが『割子そば』である。
一般的な食べ方の、掛けや盛りではなく、割子なのである。

さて、割子とは朱色に塗られた円い器のこと。
元々、出雲地方では重箱のことを「割子」と呼んでおり、その名残で現在の通称となったようだ。

そばの色は、その他の三大そばとは異なり濃い色合いだ。蕎麦殻を丸ごと製粉する為で、それはまるで日本海側の鈍色の空を思わせる佇まいであるが、盛り付けは非常に華やいでいる。

具材に関しては特段の決まりはないのだが、白ネギの名産地である地域柄、刻みネギは欠かせない。粗めの削り節と紅葉おろしも捨て難い。

薬味はたっぷりと用意する。

つゆは甘めで、これが頗る食欲を促進させる。

一番上の割子に、別添えのつゆをたっぷりと掛ける。最初のそばを食べ終わったら、次の段の割子に掛け回し、そのまま最後の割子まで食べ終わる毎に順々に掛けていく。

割子そばは、通常3枚の割子で提供されるのだが、1枚毎に追加も出来る。
男性ならば5枚は軽く食べられるであろう。

出雲そばを食べる著者

『今日は割子、何枚食べる?!』
こんな会話が繰り広げられるのだ。

私の実家では、出雲大社に参拝する際に社前の蕎麦屋へ立ち寄り、この割子そばを食べてから行くのが常である。
その為、私の中では非常に神聖な食べ物の想い出ともなっている。

出雲大社

山陰地方へ行かれた折には、是非試して頂きたい素朴な田舎の味である。

WRITER Taishi Joh

沖縄にルーツを持つ父親と、韓国人の母との間に産まれ、幼い頃から日本食とは一風変わった食卓で育ちました。
転勤族の父親に付いて、全国津々浦々に移り住み、グルメな母親の影響で週に一度は外食をしていました。
それでもやはり、一番好きな食事は母親の手作りです。母も小まめに料理を作り、夕飯の家族一緒の団欒はかけがえのない想い出です。
今でも月に一度の頻度で、田舎の特産品や母親手作りの常備菜が届きます。
そんな私が、もう永住するしかないと決めた大好きな街、金沢。
其処から全国、ひいては全世界に向けて食のあり方を発信することが出来る私たちの会社を誇りに思い、末端ながらお仕事出来る喜び…と、美味しい賄いを噛み締めている毎日です。